147話 褒め合い ページ11
会話は今日の試合のことに差し掛かり、越前が「人多すぎなんすよ……」と愚痴ったとき、割と近くにいた河村先輩が「そういえば」と切り出した。
河「昨日の納射式みたよ。すごかったね」
私と奏恵に視線を向けて、正面から褒められるので、2人して顔を見合わせてしまった。
続くように英二先輩が手をたたく。
菊「そうそう! 2人ともかっこよかった!」
大「つい1回1回拍手しそうになったよ。手塚に教えてもらったんだけど、全部あたった時だけ拍手するんだって?」
奏「そうですね、基本的には。試合中は『がんばれー』とか、『ドンマイ』とかの応援も駄目ですし」
奏恵の言葉に、テニス部から驚きの声が上がる。
私は苦笑いを漏らすが、奏恵は「ですよねえ」と同意していた。どちらの気持ちもわかるだけに、私は頷くしかない。
貴「まあ弓道は、中る中らない、勝った負けたとはちょっと違いますからね。欲をなくすっていうか」
手「弓道は心身の鍛錬を目的とした武道だからな」
不「普通のスポーツとは、目的が別のところにあるんだよね」
手塚先輩と不二先輩が2人で頷き合っていた。
…………あれ? この2人弓道部だっけ……?
桃「でもみんなルールとか知らないのにめっちゃ静かでしたよね」
私の混乱をよそに、桃が会話をつなげる。
河「そもそも弓道部の人たちが静かで、やることと言ったら拍手くらいだったから、それに倣った感じだよね」
大「手塚は1年の頃から見に行ってたよな」
手「ああ。あの空間は落ち着くからな」
菊「でも、それこそ今日と同じくらいの人数居たのに、内容によってあんなに変わるもんなんだね」
乾「特に日本人は周りの空気を読むからな。そうなりやすいんだろう」
3年生の見解に、またもや私と奏恵の視線がぶつかる。
それを越前が目ざとく見つけ、「どうしたんすか」なんて聞くものだから、3年生の視線もこちらに向いた。
私は奏恵をじっとりと見つめるが、本人は素知らぬ顔をしている。腹が立つから全部ばらしてやろうか、と私は口を開いた。
貴「その場の空気もあると思いますけど、今日の女子集合はそういうことじゃないと思いますよ」
私の言葉に、奏恵が大きく頷く。
手塚先輩や大石先輩、海堂あたりは首をひねっているが、あとの人は何となくわかっていたらしい。
乾「今日の卒業式までに、それぞれ何人に告白されたか、集計を取っている」
貴「なんでだよ!」
桃「こわっ!」
意図せず桃と突っ込みが被る。
238人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時:2022年8月26日 17時