First Love【宇髄天元】

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あっという間に時間は流れ、2月14日。

今日は勝負の日。
あの引越しを知った日から宇髄とは上手く話せなかった。それでもあと僅かな時間の間にもっと思い出を作りたくて。




つまり、きっかけは今日作るしかない。




2月14日、つまりバレンタインデー。
世の女子たちがこぞって好きな人にチョコレートをあげる1年に1度の大イベントだ。


かくいう私もまた、前日にお母さんに手伝ってもらって手作りのチョコレートを用意した。
もちろん、宇髄にあげるため。






『……あのさ、宇髄』

｢ん？｣

『いや…やっぱ何でもない』





だが用意したのと、渡せるかというのはまた別問題。

生まれてこのかた男子にチョコレートを渡したことがない私にとって、これは中々に勇気のいる行動。

そうこうしている間にあっという間に帰りの会も終わり、下駄箱で外靴に履き替える。
『はあ…』とため息を零しながら蜜璃ちゃんと帰ろうと、校門を出てすぐにある信号待ちをする。





｢あれ、永松？｣

『う、宇髄…』




神様の仕業なのだろうか。
普段タイミングが被ることなんてないのに今日に限って同じタイミングで信号待ちをしている宇髄。



…今しかない。
わかっている。そんなことはわかってる。


でもランドセルの中にあるチョコレートは未だに恥ずかしがって出てくる気配はない。



1人悶々としている内に信号は青になって、宇髄は一歩足を進める。私も蜜璃ちゃんと横並びでそのすぐ後ろを歩く。

あぁ、もう10メートル先の曲がり角で宇髄は曲がってしまう。そうしたらもう渡せない。







｢じゃ、また明日な｣

『…って』




手を振る宇髄とその横にいた不死川は私の言葉に足を止めた。





｢わり、聞こえなかった。なんて？｣





…あぁ、もう、どうにでもなれ。









『こ、これ！あげる！ばいばい！』





可愛くラッピングされた包みを宇髄の胸にグイグイと押し付けて、そのまま恥ずかしさのあまり顔も見らずに走って逃げた。



真冬で雪も降っていたのに、私は身体中が暑くて暑くて家に着いた頃には顔が真っ赤になっていた。






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