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「……んぁ」

世界史の宿題。しかも内容はどうやらよりによって苦手な中国史のようだ。


テストも近いということもあってか、高三だけでなく高一、二年生も図書室に多く集っている。

ざわざわざわざわ。騒音デシベルも3割増だ。



「前ね、逆先先輩廊下で見たの!」

「え、あの軽音部の!?」



逆先くんは文化祭の軽音部のステージに出てからというもの知名度も格段にアップし、今や学校のアイドルと言っても過言ではないだろう。



……だめだ、昨日の逆先くんが頭に降臨した。



話したこともないから分からないけどそういう感じの人なのか?


一応勉強しようと思って図書室に来たはずなんだけどな。



「そう!絶対あの時目合ったと思う!」

「え、うらやま!!」



隣の後輩ちゃんたちはますますヒートアップしてるし。


……この30分で頭に入ったの、せいぜい王羲之のぎが難しいってことぐらいだわ。




「……君たち、ここは休み時間の教室じゃないヨ」


そうそう、全くもってその通りだ。

どこの誰だか存じ上げませんがご丁寧に、と横目で見てそのまま固まってしまった。

特徴的な赤い髪、話し方なんて一人しかいないはず。



「す、すいません」


琥珀色の瞳に真正面から覗きこまれた彼女たちは顔を青くしたり赤くしたり、逃げるように立ち去ってしまった。



「……キミも何とか言ったらよかったの二」


逆先くんはそのまま椅子後ろに引いて、さも当然のように隣に座った。

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作者名:涼風@睡眠不足 | 作成日時:2020年5月5日 9時

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