3話 ページ8
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翌朝、探偵社にて
テレビにはビル街の一画がコンクリートの基礎のみになっている映像が流れている。レポーターが緊迫した様子で七階建ての建物が一夜にして消滅してしまったと語っている。
「「メッセージ』とは此れか」
国木田さんが険しい顔で云う。谷崎さんが寮にも賢治君は居なかったと麦わら帽子を心配そうに抱えながら伝えると、彼の顔は更に険しくなる。そんな中、太宰さんは冷静に現状を語る。
「"逆らう探偵社も用済みのマフィアも凡て消す"か」
社内はかつて無いほど重々しく、居心地の悪い雰囲気だった。
「皆、これ以上は単独で動くな
谷崎は敦と組んで賢治を探せ
太宰とAは俺と会議室に来い、社長会議だ」
「……Aは敦君達に付いてあげて」
国木田さんの出した指示に対し、太宰さんは少し考える素振りを見せてから隣にいたAさんに語り掛ける。彼が二人を頼むよと彼女の外套を手渡せば、はーいと気の抜けた返事をする。
正直、彼女には緊張感とかそう云った類のものが無いんじゃないかと時折思う。先程、此の重苦しい空気の中呑気に欠伸をしてたのは多分見間違いじゃ無いと思う。
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行方知らずの賢治君を探す為、僕と谷崎さんとAさんの三人ではなく、ナオミさんを加えた四人で社を出た。
「ナオミ、矢っ張り社に戻るンだ」
然し、ナオミさんが着いてくるのが不満らしい谷崎さんは、先程から彼女に探偵社に戻るよう説得を続けている。危険過ぎると引き返すように促すが、彼女は嫌だと聞く耳を持たない。
「建物ごと消せるんだから、危険なのは社も同じよ
ねぇ敦さん、そうでしょ?」
突然此方に話を振られた事に驚き、それはまぁと微妙な返事しか出来なかった。
「敦君! 君と違って妹には異能が無いンだから、足を引っ張る
そうですよね、Aさん」
Aさんも僕と同じようにうーんと曖昧に笑う。それ処か我関せずと云った感じで谷崎兄妹から視線を外し、あらぬ方向に視線を向けている。此の人、自由だな…
「と、兎に角! 事務員は社に戻___」
誰からも同意を得られない事を悟った谷崎さんは話を切り上げ先を急ごうと歩き出すが、Aさんに彼の腕を掴まれ遮られてしまう。
「待ってください 誰かに見られてる」
真逆敵かと周囲を見回すがそれらしい人物は居ない。警戒し乍ら一通り見回した所で気付いた。ナオミさんが居ない。
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作者名:手羽さき x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年8月26日 22時