２２.距離感 ページ22
帰りの飛行機の中は、それはもう史上最高に気まずい空気が流れていた。
隣に座る来栖くんは、目を閉じ、不自然なほど微動だにせず、寝息に似たわざとらしい呼吸を繰り返している。おそらく、眠っているふり。そして私はというと、実のところは私も来栖くんと同じように、目の前にある小さな画面を見つめ、必死に映画に集中しているふりをしていた。
ーーお互い、相手が気にしてないふりをしてることに気づいてる。
なんだかややこしい言い方だけど、だって実際そうだから仕方がない。
さっきのキスで、私たちは自分たちの距離感がおかしいことに気がついてしまったのだ。幼馴染みってだけでは説明のつかないほど、近すぎる距離感に気がついてしまった。
まぁ、私は来栖くんのことが好きだから別にいいのだけれど、来栖くんは違う。
ーーおそらく、来栖くんは私のことを恋愛対象として見ていない。
私は来栖くんにキスされたすぐあとに、その残酷な事実を突きつけられた。
ついさっき。
私にキスしてきた来栖くんは、暫くして突然はっとしたように顔を離して、ひどく驚いた表情をしたのだ。真っ赤な顔をしているのは私だけだった。来栖くんは、目を見開いて、びっくりしているような、不思議そうな表情を浮かべていた。そして、そのまま、「帰るぞ」とだけ呟いて、わたしを家から連れ出したのだった。
空港でも、来栖くんはずっと下を向いて私の方を見ようとはしてくれなかった。そしてそれは今もそう。来栖くんは今もこうして毛布にくるまって、眠ってるふりをしてる。
毛布に埋もれる金色を眺めてから、私はそっと目を閉じた。熱くなった瞼の裏で沸騰している何かを零さないように。
来栖くんが助けに来てくれて、よかった。好きな人から欲しい言葉をもらった私はきっと幸せ者に違いない。
ーーだからもう何も望んではいけない。
そう、神様は私に言っているのかもしれない。
「あ、もう着くみたいだよ」
「......ん？ おーマジか。外真っ暗だな」
「夜の10時だもんね」
毛布から顔を上げた来栖くんと目が合う。でも一瞬だけ。来栖くんはすぐに目を逸らして、窓の外のほうに顔を向けてしまった。
「迎えにきてくれて、ありがとう」
「あたりまえだろーが」
ガラスの向こうを見つめながら、来栖くんが言う。たった一言だけでも、自分の胸が甘く軋むのがわかる。
ーー好きだよ。
この恋はきっと報われないから。だから、私は心の中だけで、届くことのない秘密の想いを呟いた。
続く (更新停止中)
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環(プロフ) - ラビットハッチさん» コメントありがとうございます！ 本当ですか！ とっても嬉しいです〜！ こちらこそ、ありがとうございます！！ 励みになります！ (2016年12月19日 3時) (
レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
ラビットハッチ(プロフ) - わー！ずっと待ってた甲斐がありました！すごい環さんの作風が大好きで、更新されるのを今か今かと待ってました！更新ありがとうございます！ (2016年12月19日 1時) (レス) id: 7cb82700e8 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 翔くん大好き！！さん» コメントありがとうございます^ ^ 励みになります！ 更新頑張りますね！！ (2015年7月25日 10時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
翔くん大好き！！ - 面白くてこの作品大好きです！！更新頑張ってください！！ (2015年7月25日 9時) (レス) id: dca90fa2b6 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜！！ 更新頑張ります！ (2015年7月14日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：環 | 作成日時：2015年3月10日 0時
