検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:10,262 hit

21.仲直りをしよう ページ21

突然の来栖くんの登場に、私の頭の中は驚きと嬉しさと戸惑いでいっぱいだった。何が起こっているのか把握できないけれど、視界のど真ん中では来栖くんが私に微笑みかけている。

「体調不良って聞いて心配してたんだぞ。なのに、俺に黙って帰りやがって」
「うん、ごめん」
「おばさんたちには話通してやっといたから、あとはお前の気持ち次第だ」
「気持ち? 私の?」

来栖くんの瞳が優しく輝き、慈しむように細くなった。

「音楽、続けたいか」

優しい声色。真剣に音楽と向き合ってる来栖くんが一番言いたくない言葉のはずなのに。そんな言葉を言わせている自分が情けなくて、来栖くんに申し訳なくて。

喉の奥が震えて、声が出なかった。

「ーー俺の知らないところでお前がどんな思いをしてたか、最近になって少しわかったんだ。音楽がお前にとってどんな存在なのかも、なんとなく想像できるようになった。だからこそ、俺はお前に"音楽を続けろ"なんて、おばさんたちみたいなことは言えないし、強制したくない」
「......来栖くん」
「でも俺はもしお前が音楽を続けたいと少しでも思っているなら、お前が嫌な思いをしないように側で守ってやるし、音楽と真剣に向き合えるように助けてやる」

熱くなった瞼を閉じた途端、頬の上に涙が零れ落ちるのと同時に、伸びてきた手に引き寄せられた。

「......A」

なだめるようでいて、でも力強い声。

「お前のせいで俺たちに対する評価が下がることなんて絶対にないってこと、ずっとAに言いたかった。俺たちはお前の音楽だけじゃなくて、お前自身に魅せられたんだってこともずっと言おうと思ってたんだ」

来栖くんは、どうしてこんなにも私が欲しい言葉をくれるのか。

「ごめんな。仲直りしよう、A」

来栖くん。謝るのは私のほうなのに。

涙交じりの声で「ごめん、ありがとう」と呟くと、耳元で掠れた笑い声が甘く響いた。どちらからともなく顔を上げ、視線を交わす。

「なぁ、音楽続けたいのかよ」

再度問われた質問に頷く。すると、来栖くんは途端にぐっと私の顎を両手で引き寄せ、

ーー長くて優しいキスをした。

22.距離感→←20.訪問者



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (65 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
71人がお気に入り
設定タグ:うたプリ , 来栖翔 , 恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - ラビットハッチさん» コメントありがとうございます! 本当ですか! とっても嬉しいです〜! こちらこそ、ありがとうございます!! 励みになります! (2016年12月19日 3時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
ラビットハッチ(プロフ) - わー!ずっと待ってた甲斐がありました!すごい環さんの作風が大好きで、更新されるのを今か今かと待ってました!更新ありがとうございます! (2016年12月19日 1時) (レス) id: 7cb82700e8 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 翔くん大好き!!さん» コメントありがとうございます^ ^ 励みになります! 更新頑張りますね!! (2015年7月25日 10時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
翔くん大好き!! - 面白くてこの作品大好きです!!更新頑張ってください!! (2015年7月25日 9時) (レス) id: dca90fa2b6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! 更新頑張ります! (2015年7月14日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2015年3月10日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。