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19.縛るもの ページ19

「え、なに。どういうこと?」

今までずっと娘のことを放置していたくせに、今になって呼び出すなんて絶対におかしい。何か裏があるに違いない。

そんなわたしの勘繰りは、間違っていなかったようだった。

お母さんの言っていることが理解できなくて、訊き返す。すると、その隣に座っていたお父さんが真剣な顔で立ち尽くすわたしを見上げた。

「この間、学園長に訊いたんだがな、お前はこのまま順調にいけば卒業できるそうなんだ」
「......うん」
「お父さんたちはお前は卒業なんかできないと思っていた。とんだ見当違いだったよ」
「だから、何が言いたいの」

遠回しな言い方に腹が立ってくる。娘が苛立っているのを感じ取ったのか、お父さんは宥めるような口調でわたしに、また遠回しなことを聞いてきた。

「確か、お前は卒業したら、一つ学園長からお願いを聞いてもらえるんだったよな。なんだったっけ?」
「音楽を辞めさせてくれるんでしょ」

そう言うと、お父さんは頷いた。

「お前に卒業なんかできっこないと思っていたからこそ、私たちは学園長との約束を黙認していたんだけどね、お前に卒業できる見込みがあるとなれば、話は別だ」
「は? 何言ってんの......」
「私たちは、お前に音楽を辞めて欲しくないんだよ」

ふいに伸びてきた手に、体を抑え込まれる。背後に顔だけ向けると、懐かしい家政婦さんたちの顔が近くにあった。

「ちょっと、なに......」

娘に睨みつけられても怯まずに、お父さんは感情の読めない笑みを浮かべた。

「春までお前を家から出さない。卒業なんてさせないからな」

お父さんに合図されて、家政婦さんたちが動き出す。わたしはそのまま廊下に引き出され、思い出深い自分の部屋へと連れて行かれてしまった。

部屋に押し込まれてから、無情にもドアを閉められる。

わたしはこれからずっと音楽に縛られて、誰にも愛してもらえず、たった一人で生きていかなくてはいけないのだろうか。

考えているだけで、泣きそうになる。

ーーごめん、トモちゃん。3日で帰れないみたい。それどころか、一緒に卒業すらできないかもしれない。

みんなと楽しくいることに慣れたせいか、一人はひどく寒く感じて、膝を抱え込むようにしてベッドで小さくなる。目をつむっても、みんなの顔が浮かんできては、わたしの睫毛を濡らしていった。

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(プロフ) - ラビットハッチさん» コメントありがとうございます! 本当ですか! とっても嬉しいです〜! こちらこそ、ありがとうございます!! 励みになります! (2016年12月19日 3時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
ラビットハッチ(プロフ) - わー!ずっと待ってた甲斐がありました!すごい環さんの作風が大好きで、更新されるのを今か今かと待ってました!更新ありがとうございます! (2016年12月19日 1時) (レス) id: 7cb82700e8 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 翔くん大好き!!さん» コメントありがとうございます^ ^ 励みになります! 更新頑張りますね!! (2015年7月25日 10時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
翔くん大好き!! - 面白くてこの作品大好きです!!更新頑張ってください!! (2015年7月25日 9時) (レス) id: dca90fa2b6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! 更新頑張ります! (2015年7月14日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2015年3月10日 0時

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