１６.焦り ページ16
翔side
「Aちゃん、風邪長引きますねえ。大丈夫でしょうか」
そう隣りで呟いたのは那月だ。俺も軽く頷いてから、那月と同じように教室の窓から寮の方角を見つめた。
Aが体調不良で学校を休んでから数週間。部屋の前まで行ってみたものの、物音ひとつしないくらい静かなので、寝てたら邪魔かと思ってまだ一度も顔を見れていない。渋谷が言うには、もう少しで来れるかもしれないとかどうとか。もしかしたら、風邪だけじゃなくてこの間の嫌がらせのことも引きずってるんじゃないかと思ったけれど、それを話したら渋谷には考えすぎだと言われた。
渋谷がなにをどこまで知っているのかわからないけれど、俺に何も言わないってことは、Aにとっては何か秘密にしたい事情があるのかもしれない。まぁ、本当に風邪なのかもわからないしな。
「そういえば、もうオーディションのペア決めの締め切り近づいてますよ、翔ちゃん。やっぱりお相手はAちゃんですか？」
突然訊かれた質問にはっとして、顔を上げると、那月がやけに真剣な表情で俺の顔を見ていた。頷くと、那月があからさまに渋い顔をしたのでぎょっとする。
「え、那月......」
「当然ですよ。僕もAちゃんにお願いするつもりです。翔ちゃんは僕のライバルですねえ」
「マジかーッ」
「それだけじゃないです。トキヤくんもレンくんもAちゃんを狙ってるっていう噂もあるんですから」
「な、なんであいつらが！ そもそも話したことあんのか......？」
「どうなんですかねえ。でも、Aちゃんは可愛いし、実力もあるし、人気あるみたいですよ」
「そうだったのか......！！」
那月の言葉に愕然とする。話を聞いてるうちに、今まで経験したことがないくらいに心が急いできて、居ても立っても居られなくなる。
あいつが他の誰かとペアを組むなんて、絶対嫌だ。那月にだって、譲りたくない。
ふいにAの顔が頭に浮かんで、説明ができない痛みが切なく胸を締め付ける。
ーーAに今すぐ会いたい。
「翔ちゃん、顔色悪いですよ」
「正気でいられるかっての......！」
気が付いたら、走り出していた。チャイムを無視し、校舎から出て、寮へと向かう。そして、息を切らしながらAの部屋をノックする。返事がなかったので不思議に思ってドアを開けて、そして驚いた。
そこには、Aどころか、あいつの荷物ごと綺麗さっぱり消えていたのだった。
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環(プロフ) - ラビットハッチさん» コメントありがとうございます！ 本当ですか！ とっても嬉しいです〜！ こちらこそ、ありがとうございます！！ 励みになります！ (2016年12月19日 3時) (
レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
ラビットハッチ(プロフ) - わー！ずっと待ってた甲斐がありました！すごい環さんの作風が大好きで、更新されるのを今か今かと待ってました！更新ありがとうございます！ (2016年12月19日 1時) (レス) id: 7cb82700e8 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 翔くん大好き！！さん» コメントありがとうございます^ ^ 励みになります！ 更新頑張りますね！！ (2015年7月25日 10時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
翔くん大好き！！ - 面白くてこの作品大好きです！！更新頑張ってください！！ (2015年7月25日 9時) (レス) id: dca90fa2b6 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜！！ 更新頑張ります！ (2015年7月14日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：環 | 作成日時：2015年3月10日 0時
