検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:10,250 hit

15.守りたいもの ページ15

いつから好きだったかなんて覚えていない。
物心がついたときから、ずっと好きだった。

翔くん、と来栖くんの後に引っ付いていつも一緒に遊んでいた頃の幼いわたしの姿が脳裏をよぎる。
近くて遠かった、そして、今はもう決して届くことない、わたしの初恋だ。

来栖くんは入学当初ほどわたしのことを嫌いではないと思う。テストを経て、前より少しだけ仲良くなれたし、出来ることならもっと仲良くなりたい。

ーーけれど、わたしはもうこれ以上一緒に居て欲しいなんて言えない。

来栖くんの少し大きな腕のなかで、この間クラスメイトたちが話していた噂やさっきの切り裂かれた写真が頭を過ぎる。本当は、こんな風に来栖くんに助けを求めちゃ駄目なのに、一人で耐えなきゃ駄目なのに。わたしは、来栖くんに甘えてしまっていた。

今回の嫌がらせは全部、わたしがみんなと仲良くしてしまったせいなのだ。そのせいで、みんなに嫌な思いをさせてしまった。

わたしという存在がみんなの努力を握りつぶしてしまうということをここ数日間わすれていた。だから、自覚しなければいけない。みんなのことが大好きだから、尚更わたしはみんなに関わっちゃいけない。

ーーこれからは、もう誰にも頼っちゃいけない。このまま何事もなく卒業して、一人で生きていくのだ。

「A、落ち着いたか?」

無意識のうちに来栖くんの服の袖を強く握っていたらしく、視界に来栖くんの心配そうな顔が入り込んできた。
わたしは最後に一瞬だけ、思い切り来栖くんに抱き付いてから、そっと離れて、大好きな幼馴染の顔を見上げる。来栖くんは何故か頬を染めて、何かに耐えているみたいな変な表情を浮かべていた。

「......もう大丈夫なのかよ」
「うん。ありがとう、来栖くん」
「おう」

来栖くんが照れくさそうに笑う。わたしもつられて微笑んだら、来栖くんは驚いたように双眸を見開いて、それから嬉しそうに笑みを深くした。

至近距離の眩しい笑顔に心臓の奥が甘く疼く。

わたしは、もうこんな来栖くんの笑顔は近くで見ることはできないんだろうなと思いながら、四ノ宮くんが部屋にやってくるまで、ずっと来栖くんと笑いあっていた。

16.焦り→←14.小さなヒーロー



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (65 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
71人がお気に入り
設定タグ:うたプリ , 来栖翔 , 恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - ラビットハッチさん» コメントありがとうございます! 本当ですか! とっても嬉しいです〜! こちらこそ、ありがとうございます!! 励みになります! (2016年12月19日 3時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
ラビットハッチ(プロフ) - わー!ずっと待ってた甲斐がありました!すごい環さんの作風が大好きで、更新されるのを今か今かと待ってました!更新ありがとうございます! (2016年12月19日 1時) (レス) id: 7cb82700e8 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 翔くん大好き!!さん» コメントありがとうございます^ ^ 励みになります! 更新頑張りますね!! (2015年7月25日 10時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
翔くん大好き!! - 面白くてこの作品大好きです!!更新頑張ってください!! (2015年7月25日 9時) (レス) id: dca90fa2b6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! 更新頑張ります! (2015年7月14日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2015年3月10日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。