【うたプリ】恋は難解です

４.試練 ページ4

正直、これは笑えない。

もうすぐある早乙女学園恒例のテスト。それはクラスの中であらかじめ決められた人と組んでペアでやらなきゃいけないのだが、廊下に張り出された紙にわたしと並んで書かれていた名前に絶望する。

ーーー来栖翔

シャイニングさんはとことん試練を与えるつもりらしい。わたしだって、やるからには頑張る...けど！音楽って繊細だから、嫌いな人が描いた曲を歌ったりしたら絶対声に出るし、評価にも響く。それを含めてなんとかしろってことなのかな。ドSか。

「おい、A」

色々考えていると、後ろから聞こえた自分の名前。その聞き覚えのある声におそるおそる振り向くと、わたしと同じように絶望に満ちた表情を浮かべている翔くんと目が合った。そして、わたしもなにか話しかけようとして...戸惑う。

大嫌いな人から「翔くん」って前みたいに呼ばれるのって凄く嫌だよね、多分。「翔さん」も、は？って感じだし、どちらにしても名前呼びは絶対マズイから、えっと...

「来栖くん」
「ーーー...！！」
「あの、ペアなの嫌だと思うけど、えっと、頑張ろう...ね」

一語一語確かめるようにそう言えば、来栖くんは一瞬目を丸くして驚いた表情をした。でも、すぐにいつもの顰めっ面に戻って目を逸らす。

怒られなくてホッとしていると、暫くしてふとこちらを見た来栖くん。なにか考える素振りを見せてから、目の前にスッと手を差し出してきた。

「......あ、握手？」
「おう」

言われるままに差し出された手をギュッと握れば、わたしよりも少し大きい手に握り返される。

「この間も言ったけど、オレはあの日お前に言ったことを撤回する気はねぇぞ。けど、今回のテストとオレたちの事情は無関係だ。だから、今だけは忘れる」
「うん、ありがとう」
「テストの間はペア同士だ、頑張ろうぜ！」
「うん」

ニカッと笑った来栖くんに何度か頷けば、満足したように去っていくその頼もしい小さな背中を見送る。

テストの間だけだけど、少しだけ気持ちが軽くなった気がした。

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