33.妹ということ ページ33
「あー...っと、ウーロン茶一つとコーラ一つとアイスティー二つ」
カウンターの前までくると、掴んでいた手首を離して、店員さんに淡々と注文をし始めた大ちゃん。
なんでわたしまでここに連れて来られなきゃいけなかったのかわからないけど、もしかしたら大ちゃんのいつもの何も考えてないパターンかもしれないから深く考えないほうが正解だ。それに、お姉ちゃんと同じ空間にいるの気まずかったし、逆に連れてきてもらえて有難い。
なんて考えているうちに、店員さんに促されてカウンターの隅に移動すると、さっきまで黙っていた大ちゃんがふいにこちらを見下ろしてきた。暫く無言で視線を合わせたあと、バツが悪そうな顔をして、頭を掻き始めた大ちゃんにわたしは小さく首を傾げる。
「どうしたの?」
大ちゃんがこんなに戸惑っているなんて珍しい。単に気になって訊いてみただけなのに、次の瞬間、耳に飛び込んできた言葉に思わず自分の耳を疑った。
「ーーーさつきのやつ、気付いてるぜ」
「...え?」
まさか、と口を半笑いに開けながらも、呆然としてるわたしに、大ちゃんも僅かながらに困惑の色を見せた。
「いつから?」
「わかんね。けど、お前のことを俺に確認してきたのは昨日だから、昨日からはお前が妹のAだってことは確実に気付いてる」
「なんで!」
「知るか!俺だって昨日訊かれたときビビったっつーの!」
「...あ、わかった!大ちゃん、今年のバレンタイン、わたしが手作りのチョコあげなかったからって怒ってる?だから、意地悪してわたしを動揺させようとしてるんでしょ」
「そんなわけあるか!今年は市販で命拾いしたって思ってんだからよ。それに、こんなとこで嘘つくわけねーだろ。マジだマジ」
さりげなく漏れていた大ちゃんの本音はスルーしていると、タイミングよく目の前のカウンターに置かれたドリンク。後ろも詰まっていてきているので、二人で二つずつドリンクを素早く掴むと、顎で「行くぞ」と指図してきた大ちゃんの後にわたしも静かに続く。
ーーーあぁ、すごく会いたくない。大ちゃんも、なんでわたしにこのタイミングで言ったんだよ!それに、お姉ちゃんも何が目的なの?
「って、いきなり立ち止まらないでよ!なに、どうした...」
突然立ち止まった大ちゃんの背中から顔を出して大ちゃんの視線をたどると、目に入ってきた光景に思わず釘付けになる。喉からヒュッと音が出た。
「え?お姉ちゃんが黄瀬くんにチョコ渡してる...」
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環(プロフ) - たくっちさん» コメントありがとうございます〜!! そう言っていただけると嬉しいです! ほんとにありがとうございます!! (2015年12月29日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
たくっち - めっちゃ良い話じゃないですか。感動しました!これからも感動するような作品よろしくお願いします。応援してます! (2015年12月27日 18時) (レス) id: 14821b434b (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 朱いメダカ@ペンタブ禁止令さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! ありがとうございます! (2015年5月12日 0時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
朱いメダカ@ペンタブ禁止令(プロフ) - 今日読み始めて一気に最後まで読んでしまいました!!凄くキュンキュンして泣けて…凄く面白かったです!! (2015年5月11日 23時) (レス) id: edbb06b586 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - にょんさん» コメントありがとうございます^ ^ ほんとですか!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!! (2015年5月7日 23時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:環 | 作成日時:2015年2月15日 11時