32.予感 ページ32
『え?俺のことが好き?』
『...うん』
『へぇ、そうなんだ。じゃあさ、Aちゃん』
『なに』
『俺のお願い聞いてくれる?好きな人に協力してくれるよね』
『...協力?なんの?』
『さつきちゃんと俺との間取り持ってよ。そしたらさ、』
ーーーキスしてあげてもいいよ。
***
「っち、Aっち!」
「えっ?あ...ごめん」
どうしてだろう、嫌なことを思い出した。
「もう、今日どうしたんスか?ずっと、ぼーっとしてるみたいだし、やっぱり具合悪いの?」
「ううん、ほんとに大丈夫」
「そう?じゃあ、えー...っと、追加のドリンクどうする?オレ、これにするけど同じやつでいい?」
「うん、ありがとう」
そう言って笑いかければ、ホッとしたように微笑み返してくれた黄瀬くんがメニューをわたしたちの向かい側に座っている人たちに差し出す。無意識に顔を上げれば、自然と目が合った大ちゃんが気まずそうに視線を泳がせながら、メニューを受け取ると、隣りにいるお姉ちゃんとドリンクを選び始めた。
見たところ大ちゃんは、マジバに行こう、とさっきわたしと黄瀬くんを誘ったお姉ちゃんを止められなかったことについて多少たりとも責任感を感じているらしい。ちらちらと柄にもなくこちらを見てくる大ちゃんに、なんだか不思議な気持ちになる。
「...じゃ、俺頼んでくるわ」
「よろしく、青峰っち......って、なにしてんスか?」
「......ん、あれ?どうしたの、青峰くん」
おもむろに立ち上がったあと、何故かカウンターに行かずに立ち竦んだままの大ちゃんに、わたしを含め、ボックス席に座っている全員が首を傾げる。すると、大ちゃんはゆっくりと息を吸い込んでから、珍しく真面目な顔でわたしの方を向いた。
「おい、A。お前も来い」
「え?」
「え、ちょ、ちょっと!青峰っち!?」
それから勢いよく伸びてきた大きな手に手首を掴まれると、席から引っ張り上げられる。
ーーーどうしたんだろう、大ちゃん。
わたしの腕を掴んだ大ちゃんとカウンターに向かって歩きながら、後ろ髪を引かれるように振り向いたとき、こちらを見て焦ったような表情を浮かべている黄瀬くんと目が合った。
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環(プロフ) - たくっちさん» コメントありがとうございます〜!! そう言っていただけると嬉しいです! ほんとにありがとうございます!! (2015年12月29日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
たくっち - めっちゃ良い話じゃないですか。感動しました!これからも感動するような作品よろしくお願いします。応援してます! (2015年12月27日 18時) (レス) id: 14821b434b (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 朱いメダカ@ペンタブ禁止令さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! ありがとうございます! (2015年5月12日 0時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
朱いメダカ@ペンタブ禁止令(プロフ) - 今日読み始めて一気に最後まで読んでしまいました!!凄くキュンキュンして泣けて…凄く面白かったです!! (2015年5月11日 23時) (レス) id: edbb06b586 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - にょんさん» コメントありがとうございます^ ^ ほんとですか!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!! (2015年5月7日 23時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:環 | 作成日時:2015年2月15日 11時