26.友達として ページ26
「あれ、Aっち?」
ショッピング街のとある店にて。本命チョコの材料を買っていたわたしの耳に突然届いたのは馴染みのある少し高音の優しい声だった。まったく予想のしてなかった出来事に、ギギギと機械音が出そうなほどにぎこちなく振り向けば、爽やかに笑う美青年と目が合う。
「き、黄瀬くん。偶然だね」
「そうっスね〜!ほんと偶然...ってあれ?Aっち、何見てたの?」
「え、いや...」
どもるわたしの後ろを不思議そうな顔で覗こうとしている黄瀬くん。それを阻止するべく、顔の前でひらひらと手を動かして視界を遮っていたのに、余裕の表情でいとも簡単に両手を掴みとられてしまった。...これが力の差か、悔しい。
それから、黄瀬くんはわたしの後ろにあるバレンタインのコーナーを見て、目を猫のようにすうっ細める。その一連の仕草が、なんだか少し不機嫌そうに感じられた。
「......誰にあげるんスか、チョコ」
すると、少しコーナー全体を眺めてから、ふと目を伏せて、拗ねたように言われた言葉。その核心を突くような質問になんて返そうか戸惑っていると、暫くして勢いよく顔を上げた黄瀬くんは何故か焦ったように顔を赤くして声を荒げた。
「あっ!いや...変なこと訊いてごめん!ただ気になっただけっていうか、その...あーもう、なんでもない!」
「う、うん」
なんか、こっちまで顔が赤くなってきた。
口許を片手で押さえながらそう言われて、わたしも少し赤くなった顔を隠すように無意味に何度も頭を縦に振る。
もしかして、黄瀬くん優しいから、友達のわたしが本命チョコあげるってこと知って、心配してくれてる...とか?いや、でもこれは自惚れすぎかな。わたしが誰かにチョコをあげることに、興味を持ったってことしかわからない。
そして、そのあと少し立ち話をしてから、帰るときに黄瀬くんが見せた、あの切なそうな笑顔の理由もよくわからなかった。
587人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「黒子のバスケ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
環(プロフ) - たくっちさん» コメントありがとうございます〜!! そう言っていただけると嬉しいです! ほんとにありがとうございます!! (2015年12月29日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
たくっち - めっちゃ良い話じゃないですか。感動しました!これからも感動するような作品よろしくお願いします。応援してます! (2015年12月27日 18時) (レス) id: 14821b434b (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 朱いメダカ@ペンタブ禁止令さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! ありがとうございます! (2015年5月12日 0時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
朱いメダカ@ペンタブ禁止令(プロフ) - 今日読み始めて一気に最後まで読んでしまいました!!凄くキュンキュンして泣けて…凄く面白かったです!! (2015年5月11日 23時) (レス) id: edbb06b586 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - にょんさん» コメントありがとうございます^ ^ ほんとですか!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!! (2015年5月7日 23時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:環 | 作成日時:2015年2月15日 11時