21.切ない気持ち ページ21
「ーーー全っ然、眠れない」
目をつぶっていても、ウトウトするどころか、どんどん目が冴えてくる。頑張れ、合宿のときだって乗り越えたんだ。お前ならいける!
さっきから、拳を作って何度も心の中でそう唱えているが、どうしても隣の部屋が気になって、いっこうに眠くなる気配がない。時計を確認すれば、針が夜中の一時を指していた。
「やっぱりダメかぁ」
のっそりと起き上がって、ドアノブを回せば静まり返っている廊下。ホッと息をついて、そのまま静かに台所へ向かう。
ーーーここでしばらく寝させてもらおう。スッと息を吐いてから、パチッと台所の電気をつける。しかしその瞬間、視界に飛び込んできた金色に思わず息を呑んだ。
「...黄瀬くん?」
「あれ、Aっちじゃん。今からアイス食べるの?」
「食べません。寝れないから来ただけです」
わたしを見て一瞬だけ驚いた表情を見せたが、すぐにいつもの悪戯っぽい笑みを浮かべた黄瀬くん。でも、少し眠そうだ。
「......もしかして、ここで寝てた?」
「そ。青峰っち寝相悪すぎて、ベッドの上から床で寝てるオレに本落としてくるんスよ」
もう痛くて痛くて、と黄瀬くんは背中をさすりながら顔を顰める。それから、ふと思い出したように勢いよくこちらを見上げた。
「......な、んですか」
「Aっちってさ、青峰っちと一緒に住んでるじゃん」
唐突に何を言いだすんだと口を開きかけるも、目の前にあった黄瀬くんの真剣な表情に驚いて、小さく頷いてから口をつぐんだ。なんだか今日の黄瀬くんはいつも以上に表情がコロコロ変わって、反応しずらい。
「そんな、誰よりも近くにいてさ」
「うん」
「ーーー好きになったりしないの?」
予想外の言葉に喉がヒュッと音を立てる。戸惑うわたしの反応を黄瀬くんはそれを肯定と受け取ったらしく、大きく双眸を見開いた。
一瞬戸惑ってしまったものの、その言葉に訂正する必要を感じて、わたしは声は出さず僅かに口を開ける。
大ちゃんは勿論好きだけど、恋愛的な好きじゃない。それに、大ちゃんは多分お姉ちゃんのことが好きだと思う。
だからそれはあり得ないよ、と。なのに、そう言って否定しようとしたわたしに「言わなくていい」と言い放った黄瀬くんは唇を巻き込んで下を向いた。相手に何も言わさせないその迫力に驚いて思わず口をつぐんでしまう。
それから暫くして顔を上げた黄瀬くんは、わたしと目を合わせないで、目線だけ机に向けたまま弱々しく微笑んだ。
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環(プロフ) - たくっちさん» コメントありがとうございます〜!! そう言っていただけると嬉しいです! ほんとにありがとうございます!! (2015年12月29日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
たくっち - めっちゃ良い話じゃないですか。感動しました!これからも感動するような作品よろしくお願いします。応援してます! (2015年12月27日 18時) (レス) id: 14821b434b (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 朱いメダカ@ペンタブ禁止令さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! ありがとうございます! (2015年5月12日 0時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
朱いメダカ@ペンタブ禁止令(プロフ) - 今日読み始めて一気に最後まで読んでしまいました!!凄くキュンキュンして泣けて…凄く面白かったです!! (2015年5月11日 23時) (レス) id: edbb06b586 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - にょんさん» コメントありがとうございます^ ^ ほんとですか!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!! (2015年5月7日 23時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:環 | 作成日時:2015年2月15日 11時