【黒バス】桃井さつきの妹じゃありません！

１４.思わぬ再会 ページ14

「いった...」
「おい大丈夫かよ！？」

それから問答無用で殴られたわたしは、どうやら吹っ飛んでしまったらしい。

頰にコンクリートの冷たさを感じ取りながら、そんなことをぼんやりと考えていると、不意に胸ぐらを掴まれた。顔を上げれば近くにあった、見覚えのある人相の悪い顔と視線がぶつかり合う。

「...あ？A？」

すると、まじまじとこちらを見てそう言った男の人。大きく双眸を見開いたわたしの反応を肯定と受け取ったらしく、クツクツと肩を震わせて笑い始めた。その独特の笑い方に、ぼんやりとしていたある疑惑が確実なものとなる。

ーーー間違いない、灰崎くんだ。

「人違いじゃないですか」
「ったく、すぐ泣くくせに、気ィ強えのは相変わらずだなァ。...あー、そうだそうだ。お姉ちゃんは元気？"仲介役"もまだしてんの？」
「ーーーうるさい！！」

転校する前と同じように、お姉ちゃんをネタにからかってくる灰崎くん。思わずそう叫んで、目の前にある胸倉を掴んだ。

「......飽きた。手ェ離せよ」
「灰崎くんが離したら離す」

一歩も譲らず、お互いの胸倉を掴んだまま睨み合っていると、さっきから大きくなっていた規則正しい足音が、すぐ横で止まった。

「Aクンとショーゴ君、なにしてんの？」
「黄瀬！？そいつと知り合いなのかよ！」

ーーー...黄瀬くんだ。

一番会いたくない人物の登場に、内心焦りだしたわたしを尻目に、灰崎くんは不快な笑みを深くした。そして、「なに、今は男の子してんの？」と、心底可笑しそうに耳元でそう囁いた灰崎くんをもう一度睨みつける。

それから、ゆっくりと立ち上がった灰崎くんは、わたしの顔にそっと口を近づけて楽しそう笑った。

「リョータに女だってことバレたくなかったら、試合が終わったあと会場の前に来い」
「ーーーな！？」

その言葉に勢いよく顔を上げれば、至近距離で意地悪そうに笑う灰崎くんの顔に歯をくいしばる。言い返そうと口を開きかけたその瞬間、突然伸びてきた大きな手が、わたしと灰崎くんを引き剥がした。

「黄瀬くん、」
「アンタ男でしょ？ちゃんとしてよもう」
「...ごめん」
「ドリンクの話なんスけど、先輩の勘違いで、ちゃんとベンチにあったから。バスに取りに行ったAクンのこと呼びにきたんスよ」

だから早く行くよ、とギュッと掴まれた手のひら。海常の勝利を宣言して、灰崎くんを睨んでから歩き出した黄瀬くんに引っ張られるように、わたしもその場をあとにした。

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