【うたプリ】ひとしずく

23.期待なんか ページ23

「...なんの話してるの？」

返ってきた言葉は予想以上に冷たくて。なんていうか、ショック過ぎて声が出てこない。

「くだらない冗談言ってないで、作曲したらどう？」

「あ、藍ちゃん...」

固まっていると、ふいにパソコンを見て、なにか確認してからもう一度こちらを向いた。

「これからハルカと打ち合わせだから。...じゃあね」

「...え、あ。う、うん」

扉が閉まり、誰もいなくなった部屋の中でさっき言われた言葉を繰り返してみる。

...あれ？わたし、振られた...んだよね。

アイドルにあんなこと言うなんて迷惑だったかも。それにしても、なんか思ってたよりあっけなかった気がするけど。

外で気分転換でもしようと玄関に行ったとき、誰かが話している声が聞こえて思わず立ち止まった。

「美風先輩は七海さんから曲を作ってもらうのですね」

「いいよなー。七海に作ってもらえば、ヒット間違いなしだもんな」

「藍ちゃんだけじゃなく、他の先輩の曲も作曲するみたいですよ」

「！？」

...な、にそれ。そんなの聞いてない。

春ちゃんはQUARTET☆NIGHTの作曲家にもなっちゃうってこと？...また、わたしの曲が誰にも歌ってもらえなくなる。そうなったらどうすればいいの？

「あ、A...」

すると、わたしがいることに気がついたらしく、翔くんと目が合ったけどすぐに気まずそうに逸らされた。...雰囲気的にわたしが知っちゃいけない内容だったのかな。

だとしたらなんでだろう。

──── 知らせる必要がないから？

「っ！」

「Aちゃん！」

「おいっ！どこいくんだよ！」

「...一人にさせて」

やっぱり合宿なんて来るんじゃなかった。ううん。ここがわたしの居場所かもなんて、最初から期待なんかするんじゃなかった。

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