芸術科の問題児

27話 ページ29

ミカside

廊下の角を曲がろうとした時、

「ああ、今なら最高傑作が描けそうだ‼待っててレオナルド・ダ・ヴィンチ、今すぐ君の領域まで辿り着くからね‼」

何か意味不明なことを言っている女子の声が聞こえた
次の瞬間、胸らへんに衝撃を感じる

俺は数歩よろめくだけで済んだが、相手の女子はその場に勢いよく尻餅をつく

「……痛い……」

先ほどの勢いはどこへ言ったのやら
少し涙目で呟く

目の前の少女を見て、思い出す

えっと、この子今日俺らのクラスに転校生してきた子や
確か、橘Aちゃんやっけ

って、今はそんなことはどうでもええねん‼

怪我させてもうたやろか
全く動かへんか心配や……

俺が一人でわたわたしていると、Aちゃんが呟く

「うぅ……。私の作品が……」

またもや意味不明なことを言っている

でも、なんか悪いことしてもうたみたいや
めっちゃ落ち込んどう……

「え、あ、あの、なんかごめんなぁ。立てる?」

俺が手を差し伸べると、女子が顔を上げる
そしてポカンと口を開けたまま、俺の顔をジッと見た

……なんか俺の顔についてるんやろか?

「えっと、転校生のAちゃんやんな?どっか痛いなら一緒に保健室に……」

そこで彼女は勢いよく立ち上がる
驚き過ぎて変な声が出そうになった

だが、彼女は気にせず俺の両手を掴み、言った

「綺麗な目だね」

「え?」

思わず耳を疑った

大概、気持ち悪いっていわれるから
この目を綺麗なんて言ってくれるのは、お師さんだけやったから

「オッドアイ?初めて見た‼感激……。ああ、また創作意欲が湧いてきた‼ありがとね、オッドアイ君‼」

「オッドアイ君⁉」

珍妙なあだ名に、思わず突っ込みを入れる
だが彼女は聞いておらず、そのまま嵐のように去って行ってしまった

「……不思議な子やなぁ」

そう呟いた声は、予鈴によって掻き消された

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