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『綺麗ですね、先輩!』
「そうだね〜」
先輩に連れてこられたのは東京タワーの展望台だった。
一面のガラスの向こうに、東京の夜景が限りなく続いていて自然と笑みが零れてしまう。
こんな綺麗な景色、久しぶりだ。
『は、はしゃぎ過ぎてないですかね?』
「今更気にしてんの?」
クスクスと笑われて、少し恥ずかしくなった。
こんなふうにどこかに連れていかれるのも、久しぶりだったから...
「Aさ、昨日から全く笑わないから今笑顔見れてホッとしたわ。」
『え...』
「やっぱ、笑ってる方が良い」
胸からだんだんと熱が全身に伝わっていく。
頬が熱い。これじゃあまるで
「照れてんの?」
『照れてないですよ!だいたい笑えなかったのはあなたのせいで...』
「え、僕?」
「あぁ、いえ。なんでもないです。」
あなたのこと嫌ってて、それで笑えなかったとか言えるわけない。
それに、許せない範疇のことじゃない...気もするし。
私が黙ってれば、先輩はずっと私に"良い想い"を持ったまま接してくれる。
私の方の誤解はとけたんだ。謝って欲しいとかないし、笑って欲しくて連れてきてくれたと思ったら昔のことなんて
"今の五条と接してやってくれ"
忘れてしまいそう。
「ていうか、前々から気になってたんだけどAだけ僕のこと先輩って呼ぶよね。さん付けでいいよ?」
『先輩じゃ、だめなんですか?』
五条さんって、年下なら誰でも言える呼び方だ。
先輩後輩の間柄だからこそ呼べる特権を、どうせなら使いたい気もする。
「うーん。僕としては、悟さんとか呼んでくれたら嬉しいかな」
『え、でも先輩は有名人ですし、私なんかがそんな呼び方烏滸がましいというか...』
語尾が小さくなっていく。
嘘はついてないけど、何かが引っかかる。
「僕が呼んでって言ってんのに、烏滸がましいも何も無いでしょ。」
私の顔を覗き込む先輩は、頭についた耳を下げ今にもくぅんと泣きだしそうな犬みたいだった。
あぁ、そうだこの人。
『わ、...分かりました。』
私のことが好きだったんだ。
惚れた弱みなんて言うけど、惚れられた方もだいぶ弱くなる気がする。
夜景に集中したいのに、隣に立つ先輩のせいで胸がうるさくて仕方がない。
何で?嫌いだったはずじゃん。
好かれてるって気付くだけで、こんなふうになっちゃうの?
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しらす - 面白いです!応援しています♪ (2021年3月3日 4時) (レス) id: 0909f67dda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜の花 | 作成日時:2021年2月8日 19時