検索窓
今日:19 hit、昨日:18 hit、合計:200,243 hit

Tre ページ5

なのに何故知ってるの、と目の前にゆったりと座る彼を睨みつける。

杠達には器用貧乏で通っているし、それで私も通しているはずだ。

しかしそんな視線も何処吹く風。司くんは熟考するようにゆっくりと目を瞑り、やがて口を開いた。

「北東西南」
「!」
「君は……うん、この名前を知っているね」

従姉妹の名前。
小さい頃からよく一緒に遊んでいた、お姉ちゃんのような存在。

彼女はたしか記者をしていた。

「あー……やられた……」

情報を売買するのが仕事。

ならどんな情報を求められても、持てる限りのものを出すのが道理だろう。

公私を混合させるような人ではないから、司くんのファンだからといってペラペラ喋るわけじゃないだろう。

いやまぁ、少しは揺らぐだろうけど……
それにもし情報をもらえなくても、力で脅せばいくらでも聞き出せる。

──まさか、

「!彼女は無事なんですか!?」
「南のことかい?」
「南ちゃんは今、何処にいるんですか?無事なんですか!?」

もし彼女が軟禁状態にあって、拷問に近い形で情報を聞き出されていたら拙い。
ここに来た時に見たが男女率はほぼ男性が多い。

しかも殆どがムキムキマッソーメン達だ。ならば、ここは武力で統治していると考えてもいいだろう。

武力政治。

もし彼の本性が残忍な性格であれば、気に入らない者は速攻武力でねじ伏せるに違いない。

彼が私の質問に答えるまでの時間が酷く長く感じる。たったコンマ数秒の間のはずなのに、何分にも感じられた。

「彼女は、」

うん、無事だよ。

ゆったりとした口調で告げられた事実は、私の中にキリリと張り詰めていた糸をすっと解した。

「あぁ、……良かった……」

安堵のあまり声が漏れ、涙が溢れる。

本当に、良かった。

顔見知りのいないこの世界で、希望となる家族がいなければ、生きていこうなんて気力が湧かなくなってしまう。

死ななきゃ安いとは言うが、怪我をしているのを知っている上で普通の生活を送るのは、到底できない。

「君は……」
「?」
「君は……うん、隠していたはずの情報を売られたんだ。なのに何故怒らない?」

たしかに情報は大事だし、勝手に誰かの手に渡された事に怒っていない訳では無い。

でも非常時の今は人手を集めて生活を安定させなければならない。
そのために必要な能力を持っている人の情報なんて、値千金だ。

情報を守ろうと意固地になって誰かを失うよりかは、よっぽどいい。

Quattro→←Due



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (87 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
111人がお気に入り
設定タグ:Dr.STONE , オチ未定
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

_____(プロフ) - 米さん» 米さん初めまして!コメントありがとうございます。文章が硬くなってしまうのが悩みでしたので、そのように楽しんでいただけたのなら幸いです!相変わらずの亀更新ですが、米さん含め、皆様に楽しんでいただけますよう頑張ります。 (2020年4月13日 21時) (レス) id: 0c0dd0f299 (このIDを非表示/違反報告)
- 文章が読んでいて楽しくて、いつも楽しみにしています。これからも陰ながら応援しております。 (2020年4月13日 18時) (レス) id: 2a29b7989a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:____(かせん) | 作成日時:2020年3月26日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。