Trentadue ページ34
紐を括り付けたから、いつもとは勝手が違うはず。
重みや空気抵抗を考慮して少しだけ上に向ける。
私は理系でもないから計算が出来ないし、なによりそんなのを暗算するほど頭がいい訳でもない。
一か八かのカンで射った。
ぴひゅん、と空を切る音がしてすぐに、ざわざわと木の葉の間をかき分けるような音がした。
幹に刺さらなくとも、あの辺の枝に引っかかったのかもしれない。
紐は、随分遠くの方の木に射ったにもかかわらず、まだ少し余っていた。
緩く張っているその終わりにある石を持ち、崖の下から思いっきり投げ落とす。
今度はパキパキと細かい枝が折れる音がした。
その少し後に、数羽の鳥が木から羽ばたいて行った。
……驚かせちゃったかな、ごめんね
ここから下に下るという方針は変わらないが、簡単な道標が作れたのは及第点だろう。
崖のすぐ横側に、急な傾斜を見つけた。
急、といっても降りられないほどでないし、少し無茶をするとは思うがそこの道を行くことにした。
「足、痛くありませんか?」
「うん、だいじょぶ〜」
靴(といっても足袋のようなものだが)を履いている私と違って先輩は裸足だ。
あ、これがホントのはだしのゲンってか?
やかましいわ。不謹慎だぞ。
ともかく、彼は小さな石ころ一つ、土から突出した枝一本でも踏んでしまえば、その柔い足裏に傷を負ってしまう。
現代(旧現代とも言うのかな)では靴を履いて生活するのが当たり前だった私達にとっては、直に触れた地面はとても堅かった。
足の負担が少ないとは思えないそのスタイルの彼を、腫れ物に触れるような……とまでは行かないけれど、丁重に扱う。
先に降りて手を差し出し、比較的先輩の進みやすい道を選んでいく。
崖はそこまで高くなかったのか思っていたよりも早く降りきってしまった。
岩壁に沿って歩き、先程投げ落とした石を探す。
運が良ければ地面に落ちているはずなのだけれど……
まさか枝に引っかかった衝撃で結び目が解けてしまったのか。
いやいや、ちゃんと抜けないように十字に縛ったのだから、それはまず無いだろう。
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_____(プロフ) - 米さん» 米さん初めまして!コメントありがとうございます。文章が硬くなってしまうのが悩みでしたので、そのように楽しんでいただけたのなら幸いです!相変わらずの亀更新ですが、米さん含め、皆様に楽しんでいただけますよう頑張ります。 (2020年4月13日 21時) (レス) id: 0c0dd0f299 (このIDを非表示/違反報告)
米 - 文章が読んでいて楽しくて、いつも楽しみにしています。これからも陰ながら応援しております。 (2020年4月13日 18時) (レス) id: 2a29b7989a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:____(かせん) | 作成日時:2020年3月26日 12時