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レオナルドは素っ頓狂な声を上げて、訳が分からないといった顔をした。
「スティーブンさんの傷は治ってたじゃないですか...。殺したって、意味、分かんないっすよ。」
「...ジョークだと思う?」
「そうだとしたら、相当タチ悪いですよ。」
Aは、そうね、と沈んだ声を出して、レオナルドを見た。その視線に耐えられずレオナルドは顔を反らす。
「彼は助かったんです。ちゃんと、この眼で見ました。Aさん、今から病院に行って、スティーブンさんを貴女の目でもう一度見ましょう。きっと貴女は疲れてて混乱してるんだ。」
行きましょう。とAをランブレッタまで引っ張った。まるで風船を持っている様な感覚で、少し心配になるほど軽かった。
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ごうごう耳をかすめる風の音が、メーターの吹っ切れたランブレッタを走らせる度に強くなる。
「Aさぁん!!大丈夫ですかあ!?」
レオナルドの腰に回された細腕が、返事代わりに強く締まる。
あの後、病院まで泳いで行く、と一点張りだったAに、レオナルドは無理矢理ヘルメットとゴーグルを被せ後ろに乗らせたのだ。
今までの車移動でもちゃんと座れていたらしいので、座る事に関しては魚の下半身であっても問題ではなかった。
しかし、如何せん箱入り娘にランブレッタは早過ぎたようだ。ギシギシと締め付けられるレオナルドの腰は悲鳴を上げている。
「私今までこんなに速く泳いだ事無いもの!!」
「んな事言ったって!いつも車に乗ってるじゃないすか!!」
「だって車はこんなに風を感じないわよ!!」
信号待ちをする度に降りようとするAを引き止めようとレオナルドは必死だ。
ちらほら「あの人類1人で喋ってるぞキメェ」と声が上がる。
「(どうせ友達がいない奴って思ってんだろ!残念だったな!俺は後ろに超美人の人妻乗せてんだよ!ざまあみやがれパンピー共が!!)」
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レオナルドが悶々と思考を巡らせる間に、ランブレッタは目的の病院に着いた。
メットを外し髪を振るAは、それだけで何本もCMが来そうなほど絵になっている。
「レオナルド君、私ちょっと平静じゃなかったわ。ありがとう。」
「こっちこそ無理矢理乗せてすみません。」
「気にしないで、楽しかったわ。
やっぱり改めて人妻って思われるのは、少し恥ずかしいわね。」
ふふ、と笑いエントランスに向かうAの後ろで、「(あの人心読めるんだった!!!)」と今更気付いたように、レオナルドは顔を真っ赤にした。
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9t9 - 血界戦線大好きのスティーブン推しで貴方の作品を見つけました。本当にこの作品が大好きです!ツェッドさんとか出てきたら絡みがどうなるのかとかも楽しみだし単純にこの先の物語が楽しみでなりません!!更新が止まっていらっしゃるようですがずっと待ってます! (2022年10月19日 16時) (レス) @page38 id: f8f6fc2c71 (このIDを非表示/違反報告)
ひゃぼ(プロフ) - いつまでもお待ちしております...!!! (2021年8月28日 1時) (レス) id: 4c0d27bb14 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - 初コメ失礼します。一人称は使い分ける方が良いと思います。ちょっとしたことですがこれだけで表現の幅がだいぶ違うと思うからです (2017年10月30日 19時) (レス) id: 5884d91fd1 (このIDを非表示/違反報告)
Rin(プロフ) - メヌエットさん» コメントありがとうございます。面白いと感じて頂けて嬉しいです! (2017年10月30日 1時) (レス) id: 409b7a99fe (このIDを非表示/違反報告)
Rin(プロフ) - nana☆さん» アンケート回答ありがとうございます!更新頑張りますね。 (2017年10月30日 1時) (レス) id: 409b7a99fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rin | 作成日時:2017年10月23日 8時