ｓｗｅｅｔ【２】 ページ2
「俺…の幸せ？」
『はい！
正確に言いますと、私は櫻井さんが作り上げた幸せです。
櫻井さんがこうなれば幸せだと思ったことを形にしたのがこの私。
言わば、私は幸せの妖精です！』
「それって、俺は俺に嫁がいることが幸せだと思ったから君がいるのかな…？」
『いえ！櫻井さん、1人が寂しいんですよね？愚痴を1つや2つ聞いてくれるそんな人が欲しかったんですよね？
私はそんな貴方の幸せのためにやってきました！』
「あー。なる…ほど…」
俺が理解をすると彼女は火にかけていたリゾットを思い出して慌ててキッチンに向かった。
『櫻井さん！完成しましたよ！』
目の前に出てきたリゾットは春を感じるほうれん草のリゾットだった。
その味はとても優しくて食べやすかった。
「うん！この味好きだなぁ」
『もちろんです！このリゾットも櫻井さんの望む幸せが作ったものですから！』
「思い通りってわけね…」
その後、お風呂に入ってリビングに戻ると紅茶が用意されていた。
「なんだかなぁ。メイドさんがいるみたいだな。」
『望むのでしたらメイド服…着ますよ…？』
「いやいやぁ！大丈夫だよ笑」
紅茶を喉に通せば体の芯が温まった気がした。
『櫻井さん、お仕事忙しいんですね』
そんな彼女の切り出しから始まった会話はいつしか仕事の愚痴になっていた。
「ほんと、ここまでひどいのは新人時代以来だ笑」
『失敗はいけないことですか？』
「そんな事はないと思うけどね…。しすぎもね…」
『櫻井さん。明日がある！ですよ。
きっと、明日はうまく行きます。
私は、応援してます。』
ふと、感じたのはこれって俺の妄想なのかなってこと。
だとしたら、相当ヤバイ人間に成り下がっている。
だけど、今日ぐらい。
今日ぐらい、甘えてもいいよな。
「そう、だねぇ。明日がある！だね笑
そーだ。君さ、名前は？」
『…？幸せの妖精です。』
「そうじゃなくて、名前」
どんなに言っても彼女は首を傾げる。
「名前、ないの…？」
『櫻井さんのような、素敵なお名前はわたしにはございません。』
しばらく考えて頭に浮かんだひとつの名前。
「じゃあさ、今度からAって呼んでもいいかな？」
そう言うと彼女は今日1番の笑顔を見せてくれた。
「はい！ぜひ！」
今日から始まる何とも不思議な生活。
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作者名：ティンク | 作成日時：2017年3月27日 3時
