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「お前、その腹立つ顔やめてくれよ」
「あ? 顔?」
廊下の端、そいつに掴まれたその場所で。
開口一番、何を言うかと思えば俺の顔が気に入らないと。
そいつはそれだけを言った。
「悪ィがこれは生まれつきなんでな。今更んなもんやめれねェよ」
「そーゆうことじゃねーんだよ」
声を荒らげて、そいつは俺の襟首を掴む。
グイ、と顔が寄って、さらに角度のキツくなった眉の下で
こちらを睨めつける瞳と視線がかち合う。
「その、自分の人生全部恨めしいみたいな辛気臭いうぜぇ顔やめろつってんだよ」
なんの話かわからない。
「んな顔してるからねーちゃ······姉貴はお前に構ってんだよ」
「少なくとも姉貴の前でその顔すんじゃねぇ」
言うだけ言って、そいつはあっさり俺を解放した。
すぐに廊下の向こうに消える。
本当に訳がわからない。
俺が辟易しているのは、あのクソジジイだけだ。
別に親やウチで働く人も嫌いなわけではない。世話になっていると思う。
人生をそんな風に恨んだことは······。
いや、恨むというか。
クソジジイには腹立つが。
だから、俺は別にそんな顔をしている気はない。
訳のわからない話に、また苛立ちが募る。
ああ、くそ。
訳がわかんねェことだけ言って消えやがって。
腹の底に溜まりに溜まった苛立ちが、吐き出す場所もなく燻っている。
······胸糞が悪ィ。
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作者名:花藺 | 作成日時:2018年5月25日 20時