辟易、しかし再会 ―1― ページ10
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「来てくれたんだ!」
目の前で笑う、そいつ。
仲良くしたいなんてことをほざいたそいつだ。
「べつにあんたに会いに来たわけじゃねェ」
そう吐き捨てた。馴れ合いはどうも好きじゃない。
「またまたぁ〜。来たら私と会うって賢い君ならわかってるでしょ」
細い手が両肩に乗った。からかうような口調に腹が立つ。
払いのけて、すたすたと廊下を進んだ。
追いかけてきたらどうしようかと考える。しかし後ろに付いてくる気配はない。
「······誰が会いに来ただ」
なぜか、無性に腹が立つ。
(なにがわかるわけでもないくせに)
そう思う。思う······が。
自分も、あの誤魔化すように笑うあいつのことをわかっているわけではないのだと、
······解っている。
「おい」
唐突に、横合いから声を掛けられた。
そう理解はしたが、反応する義理などない。
そのまま、通り過ぎようと、
「お前だよ。おぼっちゃん?」
手首を握られた。放す気はないらしく、なかなかに強い力。
普段ならそういった嫌味も聞き流すが、むしゃくしゃとする内心にそんな余裕はなく、
さらに苛立ちが溜まっていく。
「······んでェ、ガキ」
「はァ? お前もガキだろーが」
「用がねーなら放してくんな。邪魔だ」
言いながら、改めて誰とも知らない、恐らく同年代の少年を見る。
どこかで見たか。見覚えがある。
つり上がった眉、暗い紫色の瞳。
(······あァ···)
こいつはあれだ。
「話し掛けてんだからあるに決まってんだろ」
「へェへェ。なんのご用で? カズキクン?」
あの女の、弟だとか言う。
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作者名:花藺 | 作成日時:2018年5月25日 20時