四十物十四/守る ページ26
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"大切なものって、きっと気づかないうちにあるんだと思うんだよね"
"…っ……なら、僕の大切なもの、はAちゃんじゃない…?"
"そんなことないんじゃね?____が大切だって思ったものも大切なものだよ"
"!!な、なら、Aちゃんは大切だよっ!"
「ッは…………」
スズメのなく声と、時間を刻む時計の音が鳴り響く部屋の天井を見つめる。
うっすらと濡れた頬を拭って時計を手に取り、ため息。
「まだ起きる時間じゃないのに…」
完全に目が冴えてしまった。
時計を元の位置に置き直して、カーテンを開けるためにベッドを下りる。
フローリングが軋む音と同時に、部屋の扉がノックされる音。
「なに、」
「あら、今日は起きちゃったのね…お母さん、もう出るから、お弁当ちゃんと持っていってね」
「うん」
扉越しに聞こえる母の声に相槌を打てば、「行ってきます、」と優しい声をかけ、足音が遠ざかる。
「はぁ…」
朝からため息は吐きたくない。朝から幸せをこれ以上逃がすようなことをしたくない。
心の中でそう思っていても、出てしまうのだから仕方の無いこと。
少し痛い頭を押さえながらリビングに向かえば、丁寧に包まれたお弁当箱と、簡易的でも栄養のある朝食がラップに包まれ置いてあった。
「……ありがとう」
もう家にいない母に感謝の言葉を漏らして、朝の支度を始めた。
_________
朝は憂鬱だ。
周りの声に対して眉間に皺を寄せながら、特に意味の無いラジオの音量を上げた。
「うわ、今日羽純さん居るよ…」
「この時間にいるの珍しー」
ヒソヒソと小声で話すぐらいなら、堂々としやがれ。
キッと其方を一睨みすれば、慌てて口を閉じて目線をそらす生徒。
「羽純ぃ〜、髪染め直して来いって言ってるだろ〜?」
「地毛申請してるんですけど」
「ほんとに地毛か??ん???」
「いッ……訴えるぞこの野郎…」
「まあいい、今週までに染め直してこいよ〜」
ッち。
地毛申請してるって言ってんだろうがこのくそ教師。
根も葉もない噂話に、でっち上げられた嘘。生徒を信用しない教師に、イ ジメを見逃す教師。生徒にちょっかいを出す教師に、教師にちょっかいを出す生徒。
マトモな人間なんてほぼ居ない。
私は私自身をマトモだと思ってないし、マトモだと思われてなくたって頷けた。何も言わないで居れた。
マトモな人間からしてみたら、私の方がマトモじゃないからね。
………
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星妻桜@姉妹同盟(プロフ) - 主の心を俳句に 好きすぎる 推しイケメンか 無理しんど (2020年9月17日 2時) (レス) id: fe16128dce (このIDを非表示/違反報告)
おやたぬき(プロフ) - 綾海さん» 了解です!リクエストありがとうございます!!さては寂雷先生推しですか??()遅くなりますが、気長にお待ちください! (2019年2月20日 22時) (レス) id: 42caa9770f (このIDを非表示/違反報告)
月華姫(プロフ) - こんばんわ!リク受付ありがとうございますm(__)mはい!完成ゆっくり楽しみにお待ちしています♪おやたぬき様のペースで此れからも頑張ってください!!ではまたっ (2019年2月20日 21時) (レス) id: 8c63610ac2 (このIDを非表示/違反報告)
おやたぬき(プロフ) - 月華姫さん» 了解しました!!遅くなってしまうかもしれませんが、気長に待っていただけると嬉しいです!リクエストありがとうございます!! (2019年2月20日 21時) (レス) id: 42caa9770f (このIDを非表示/違反報告)
綾海(プロフ) - リクエストで、交通事故でPDSDになってしまった夢主(寂雷先生の年の離れた妹)と寂雷先生のお話がみたいです。 (2019年2月18日 20時) (レス) id: ba228ed2f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おやたぬき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sakuhi/
作成日時:2018年9月27日 21時