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やっと落ち着けた……と小さく溜息を吐くと、一郎くんが苦笑いしながらお茶を差し出してくれる。
「すんません、本当は自分でやんなきゃいけねぇって分かってるんですけど…」
申し訳なさそうに眉を下げながらそう言う一郎くんに手を振りながら、大丈夫だよ、と答える。
「人から頼られるのは嬉しいからね」
と笑顔でそう言えば、かっこいいっすね!なんてキラキラした目で見つめられてしまう。
か、かわ…。
弟みたいな感覚で思わず一郎くんの頭を撫でてしまう。
「っあ、ご、ごめんね!!」
「い、いや…俺は大丈夫、です………」
突然のことに固まったあと、ぶわっと顔を赤くする一郎くんに釣られて、私まで顔を赤くしてしまう。
「注文の品でーす」
「あ、はい!」
きまづい沈黙を蹴破るように、店員さんが頼んだものを持ってくる。
それを配るため、立ち上がる。
「はい、乱数くん、どーぞ」
「ありがとー!」
「はい、帝統くん、これであってる?」
「お!!サンキュっ!!」
席が近い人から配って行くと、最後に余ったのは、見事に幻太郎さんの分だった。
私はそこで一瞬戸惑う。
ニコニコしてるから、周りの人には分からないかもしれないのだが、幻太郎さんの目は完全に笑っていない。
「っあ、えっと…………どうぞ」
「ありがとうございます」
何を言ったらいいのか、そもそも何に怒っているのか理解していない私は、おずおずと飲み物を差し出す。
すると、飲み物ではなく、それを持った私の手首を掴む幻太郎さん。
その振動で揺れた、なみなみと注がれたお茶が零れて私の服にかかる。
「つ、冷た…っ」
「あぁ、すみません。手が滑りました。今拭きますね」
申し訳なさそうに眉を下げながら、近くにあった布巾で私の手や服にかかったお茶を拭き始める。
「や、あの、自分で……」
みんなが見ている前で、平気な顔して幻太郎さんに拭くのをおまかせできるほど、私の精神は強くない。
だんだんと恥ずかしくなって、幻太郎さんの腕を掴むと、怪訝そうに私を見上げる。
「あ、の…自分で、拭けます、よ?」
「………そうですねぇ。でも、貴女はまだ分かってませんよね、なんで小生がこんなことするか」
え…?
周りには聞こえない位の声で私にそう囁く幻太郎さんの表情は、少し、怒っているようにも見える。
………
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星妻桜@姉妹同盟(プロフ) - 主の心を俳句に 好きすぎる 推しイケメンか 無理しんど (2020年9月17日 2時) (レス) id: fe16128dce (このIDを非表示/違反報告)
おやたぬき(プロフ) - 綾海さん» 了解です!リクエストありがとうございます!!さては寂雷先生推しですか??()遅くなりますが、気長にお待ちください! (2019年2月20日 22時) (レス) id: 42caa9770f (このIDを非表示/違反報告)
月華姫(プロフ) - こんばんわ!リク受付ありがとうございますm(__)mはい!完成ゆっくり楽しみにお待ちしています♪おやたぬき様のペースで此れからも頑張ってください!!ではまたっ (2019年2月20日 21時) (レス) id: 8c63610ac2 (このIDを非表示/違反報告)
おやたぬき(プロフ) - 月華姫さん» 了解しました!!遅くなってしまうかもしれませんが、気長に待っていただけると嬉しいです!リクエストありがとうございます!! (2019年2月20日 21時) (レス) id: 42caa9770f (このIDを非表示/違反報告)
綾海(プロフ) - リクエストで、交通事故でPDSDになってしまった夢主(寂雷先生の年の離れた妹)と寂雷先生のお話がみたいです。 (2019年2月18日 20時) (レス) id: ba228ed2f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おやたぬき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sakuhi/
作成日時:2018年9月27日 21時