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「ひとまず、瀬川くんについては迎えを送ろう。」
「まさやか、すずはか、ゆき、かな。びゅんびゅんって、すっごく走れるからね」
 美影もその判断に異論は無い。彼らは社内でも有数の移動能力に秀でた異能の持ち主だ。東雲涼葉はもともと移動に特化した異能の所持しているし、松矢昌也と黒江ゆきは自らの肉体を移動に適したものに造り変えることができる。
ただ、東雲と黒江は現在交渉の任に就いている最中であるし、松矢にはどちらかといえばこの後に話す予定の爆弾の処理に回って貰いたいという思いがあった。しかし、そうなると適した人材がいない。

どうしたものかと美影が黙り込むと、タイミング良くポケットの携帯が震えた。
「うん?不動くんあたりの報告かな」
携帯を確認すると、SNSのメッセージ通知のようだ。
やはりカメラの件についての報告か。少なからず安心した心持ちで開いたSNSの会話画面に映し出されたのは、しかし彼女の予想とは違う言葉だった。
長船が失踪した。瀬川の件とは別に捜索を希求。

「!」
予想と現実との相違に、一瞬美影は言葉を失う。
「参ったね…」
意図せず苦笑の形をとった口から零れ出た言葉は、本来持たない筈の質量を含んでいる気がした。「どうかしたんですか?」
「かんら、なににまよったの?」
不思議そうな廣瀬と楔埜に、無言でくるりと無機質な液晶の画面を向ける。
「な…!」
廣瀬の表情が強張った。
「ど、どういうことですか…!?」
「今の時点ではわからない」

口から出た自分の声が思いのほか低いことに驚く。
普段なら冗談の一つでも挟んでいる所だが、今の美影にはそこまでの余裕はなかった。
美影の頭を占めていたのは、他でもなく、彼女自身が昔所属していた木更津のとある特殊戦闘部隊のことである。
不動からの報告を聞く限り、彼らがここに来ているのは間違いないようだ。もしも瀬川や長船の失踪が彼らの仕業だというのなら、一筋縄ではいかないだろう。美影が社内で一番彼らをよく知っているとはいえ、いや、その力を知っているからこそ、攻略は容易ではないだろうといえた。
勿論、決め打ちは視野を狭める。ただ、考慮に入れておいて損はない。

「…うーんと、かげとらは」
「きゃああっ…!」
楔埜の呟き。被せるように響いた、聞き覚えのある悲鳴。別の種類の緊迫が満ちた。
「中庭の方だ!」
「公由さん!」
弾かれたように美影たちは走り出した。

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神羅(プロフ) - 蛍火さん» すみません、もう締め切っておりまして……。それに、今は殆ど機能しておりませんので……。ボチボチ更新しなければと思うのですが、私も一応受験生でして……。すみません。 (2018年7月9日 23時) (レス) id: 57d9444f68 (このIDを非表示/違反報告)
蛍火 - お話読ませていただきました。もしも席がまだ空いているのなら、社員として、入らせていただけると嬉しい所存でございます。この小説を読もうとしたきっかけは、ラハルちゃんの紹介です。お考えの方よろしくお願い申し上げます。 (2018年7月3日 14時) (レス) id: 62a90d8188 (このIDを非表示/違反報告)
神羅(プロフ) - 浅葱さん» 頑張ります! ちょこちょこ更新しますね (2018年3月4日 21時) (レス) id: a22dd21ad8 (このIDを非表示/違反報告)
浅葱 - すごい、面白いです!更新待ってます!! (2018年3月3日 13時) (レス) id: 2921f40b7a (このIDを非表示/違反報告)
神羅(プロフ) - 花園イリアさん» はい! おかげさまで突入できました! 不定期更新ですが、これからもよろしくお願いいたします(^-^ゞ (2017年5月5日 14時) (レス) id: a22dd21ad8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神羅 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2017年4月27日 0時

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