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「今日ね、学校で短冊にお願いを書いたの」


 短冊に、お願い?



「うん。一つだけ、とってもとっても思いを込めて書いてきたんだよ。がんばって竹の高い部分にも結んできたんだ。なのに」



 僅かに口を尖らす。



「……晴れてなかったら、空に願い事が届きにくいんじゃないかなあ、と思って」




 …………


「可愛すぎるよ、お前」
「もう、お兄ちゃん、真面目に聞いてよ!」




 思わずその小さな体を抱きしめたら、抗議の文句をぶつけてくる。

 まったく、この無自覚天然が学校でも炸裂されてるのかと思うと、心配でたまらないよ。

 ……いっそ閉じ込めておきたいぐらい。



「大丈夫、彩のお願いはちゃんと天に届いてるよ」
「本当に?」
「本当に」




 ぱあっと花が開いたような笑顔を見せる彩。



「ふふふ、お兄ちゃんが言うなら大丈夫だよね」





 そう言ってニコニコする姿は、天使そのもの。

 狂おしいぐらい愛おしくなって、柔らかな白いその頬に、ちゅっとキスをした。


「お兄ちゃん、彩のこと大好きだねー」
「何言ってんだよ、お前もだろ」
「うん、彩も大好き!!」


 そういって腕を首に回してくる彩。
 頑張って背伸びをして、俺の頬にちゅっと可愛らしい音を立てる。



 ……ああもう。

 甘い感情が胸を満たす中、一つの寂しい予感がよぎる。



 こうして彩が俺を、通常の妹から兄へ向ける感情以上に慕ってくれるのは、俺たちにちゃんとした親がいないから。
 彩は小さいながらにその意味を痛切に感じていて。


 ……こうして素直に甘えてきてくれるのは、他に甘える対象がいないからだ。

 もし彩が、いまより大きくなったら。
 彩が今より大人になった姿なんて想像もできないけど、美しいには違いなくて。

 ……俺以上に大切な存在も、いつかはできるんだろう。


 愛し、愛されて、その憎らしい男の元に、いつかはいくんだろう。
 その時の彩も、俺を慕ってくれていることは変わらないと思う。でもその真の愛情は、その男のもので。



 そんなことを想像しては、耐え難い寂しさに襲われる。

 俺にはそんな対象なんてきっとできないし、作るつもりもないし………。



 ニコニコと笑う彩の顔を見て、もう一度ぎゅっと抱きしめた。


 ……少なくとも今は、彩の兄として生まれてこれたことを誇りに思おう。
 彩と共に過ごせる時間の幸せを、噛み締めよう。



*→←6、七夕



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イズミ - 黒木君が泣くという発想がわたしにはおもいうかばなっかたので、すごいとおもいます。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page12 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - アーヤが7人で見たらぎゅうぎゅうだよ。って言った後、「アーヤ最強。」と言われているのも面白かったけど、どいう意味かアーヤが分かっていないのが面白かったです。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page6 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - わ、待ってます! (2019年1月6日 0時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)
花畑(プロフ) - ずずさん» 了解です(笑)次の「誰も知らない物語3」で書かせていただきますね!いつになるかは分からないですが…その時はよろしくお願いします。 (2019年1月5日 21時) (レス) id: e150cc9add (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - 大丈夫です、嬉しいです!あ、いや、受け取らなくてもいいですよ…? (2019年1月5日 20時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花畑 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年11月21日 15時

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