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161.約束の絵 ページ11

「そうだ。

 今日のことも何かの縁だ!

 兄ちゃんにこれをあげるよ。」


 男はそう言うと、俺の手に何かを握らせた。


「これは…」


「それ、さっきの話の姉ちゃんにもらったんだ。

 加密列(カミツレ)の香り袋。

 心を和ませてくれる花の香りなんだとよ。

 お守りがわりに持っていたんだけど、

 お陰で絵描きの仕事も順調になって、

 子どもとも楽しく暮らせているんだ。

 だから、もう俺には必要ないからさ!」



 手のひらの上に乗る小さな香り袋を見て

 胸がどうしようもなく苦しくなった。


「ありがとうございます。」


「そういえば、あの姉ちゃんも、

 兄ちゃんと同じ妙な服装をしていたよ!

 最近は見かけなくなっちまってさ…」


 俺は彼に微笑んで告げた。



「おそらく、その女性は俺の…俺の妻でしょう。」


 目を丸くして驚いた男は、すぐに笑顔になり、

 俺の背中をポンっとたたいた。


「そうかい!こんな偶然あるんだな!

 いや〜、美男美女の夫婦だな!

 それじゃあ、旦那、ひとつ頼みを聞いてくれるか?」


「頼みとは?」


 男はスケッチブックから一枚の絵を取り出した。

 そこには朗らかに微笑むAの絵が描かれていた。


「またどこかで会えたら、彼女の絵を贈ると約束したんだ!

 俺にとっては、あなたの奥さんは天使みたいなものだから。

 生きる道を導いてくれた天女だな!」


「とても素敵な絵です。」


「そうだろう?天女様のことは忘れられなかったからよ!」



 俺は絵の中のAの頬をそっと撫でた。



「奥さんに渡してくれ!

 それから、伝言も頼むよ!君のおかげで幸せになれたと。」



 嬉しそうに微笑む絵描きの男を見ていると、

 俺も幸せな気持ちになれた。




「承知しました!必ず妻に渡して伝えます!

 ありがとうございました!」



 男に別れを告げると、

 俺は手にした香り袋と絵を青空に掲げた。




「A、見えるか?

 素敵な絵をいただいた!


 君が彼に灯した心の炎は、たしかに燃え続けている。

 この先も消えることはないだろう。」
 


 雲ひとつない青い空だから、

 君にもしっかりと見えたかな。

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 小鈴さん» 感想ありがとうございます!最後までお読みいただき光栄です。物語は読んでもらってこそ生きるものだと私は思うので、この作品を見つけてくださり、そして読んでくださったこと、本当にありがとうございます! (2022年11月15日 18時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。途中からずっと、涙なしでは見られませんでした。この作品の主人公と煉獄さんに出会えて本当に良かったです! (2022年11月14日 22時) (レス) @page50 id: 97399e389e (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 最後までお付き合いいただき、感謝申し上げます。主人公に感情移入し、物語に入ってもらってこそ、この小説の醍醐味と思い作っていたので、大変光栄です!あたたかいコメントにいつも励まされておりました。ありがとうございました! (2022年7月16日 7時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 読了が遅くなりました。お疲れ様でした。長らく愉しませて頂きました。現し世でなくても、ハッピーエンドとは!こういう纏め方もあるのかと感心です。彼女の気持ちに入り込んでいたため、逢いたいけど早いよと涙しました。 (2022年7月15日 16時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!起承転結の「転」は恐らく読者様の予想を超えるものになってしまったかもしれません。しかし、美桜さんのように嬉しいお言葉をいただけると、作者として本当に幸せです♡最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (2022年7月10日 15時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年6月12日 13時

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