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135.茜に染まる ページ35

「Aの顔を見たら、

 幸せということが伝わってきたよ。

 きっと、炎柱様は良い人なんだろうね。」



「うん。とても素敵な人だよ。

 おじいちゃんのように優しくて強い人。」


 私がそう言うと、祖母は目に涙を溜めて微笑んだ。


「交際のこと、お父さんたちから聞いたんだね。

 おばあちゃんに連絡せずにごめんね。」


「いいんだよ。任務、忙しいだろう?

 それに、私は息子たちがAの近況を嬉しそうに

 話してくれることが何より幸せだから。」


「おばあちゃん…」


 私は祖母の身体を抱きしめた。

 その身体は小さく、骨張っていて、

 痩せてしまったなあと感じた。


「あっ、そうだ!
 
 おばあちゃんにこれあげる。」


「これは…絵蝋燭(えろうそく)かい?」


「うん。1年前くらいにたくさん買っちゃったの。

 とても素敵なものなのだけれど、

 さすがに使いきれないから、良かったら。」



「ありがとう。」




 祖母の家を出ると、私は任務地へと足を運んだ。

 赤蜻蛉(とんぼ)が茜色の空を自由に飛びまっている。

 

 何となく指を立ててみると、

 1匹の蜻蛉が羽を休ませるように私の指に止まった。

 しかし、もう1匹の蜻蛉が近くにやってくると

 誘われるようにすぐ飛んで行ってしまった。




 寄り添い合いながら飛び回る蜻蛉を見ていると、

 急に杏寿郎に会いたくなってきて私は空を見上げる。




 ぼうっとしていると、

 後ろから声が降ってきて私は我に帰った。


「Aさん!」


「…相之助くん?偶然だね!任務?」


「いえ、実は炎柱に呼ばれていまして、

 これから待ち合わせ場所の店へと向かうところです。」


 杏寿郎に…

 鬼の情報収集かな。


「あの!Aさん…」


「ん?どうかしたの?」


 相之助くんは少し躊躇ってから、

 おずおずと私に何かを差し出した。


「これは…栞?」


「はい。あなたにお渡ししたくて…」


「私に?…これ、木槿(むくげ)の花が押し花にされているのね!

 とても素敵。」


 相之助くんはどこか寂しげに笑っていた。

 彼の髪が風に揺れ、夕日に照らされたせいか、

 頬は紅く染まっている。


「Aさん、俺は…あなたの…」


 続く言葉を待つ瞬間、

 この世界から音が消えたように静まり返った。

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、コメントありがとうございます!夜空に咲く花のシーンは、私自身お気に入りのシーンなので、そう言っていただけて、とても嬉しいです!ありがとうございます。 (2022年6月12日 20時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 夜空に咲く花を背にした二人の情景が浮かぶ綺麗な文章にも癒されました。 (2022年6月12日 18時) (レス) @page44 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - ストレートに伝えて下さる煉獄さんに、またまた癒やされました。本日もご馳走さまでございます! (2022年6月12日 18時) (レス) @page43 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - エリスさん» エリスさん、応援ありがとうございます!ずっと読んでくださっているだなんて感激です♡ 更新の励みになります!ぜひ、最後までお付き合いくださいませ。 (2022年5月5日 0時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
エリス(プロフ) - 第三弾おめでとうございます^ ^こっそりとずっと読んでます(笑)これからも応援してます! (2022年5月4日 23時) (レス) @page12 id: 8779dd4f89 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年4月27日 20時

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