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4.憂いを帯びた瞳 ページ4

「…あ、あの!」


「…何だ。」


「助けていただいてありがとう…ございます。」


 私がお礼を言うと男は一度だけ私と目を合わせた。



 その瞳が一瞬、大きく開いて光を帯びた。



 私から目を逸らしたその人は



 小さなため息をついて、吐き捨てるように呟いた。




「…君の連れを救えなかった。


 所詮、俺はその程度なのだ…


 礼などもらうような男じゃない。


 やはり敵わないのだ…


 始まりの呼吸には…」



 始まりの呼吸…?


 何のことを言っているのか私には理解できなかった。



 私は彼の手を握りしめ、その亡骸に寄り添った。




「…だんだんと冷たくなっていくんです。


 ついさっきまで温かかったのに。」



 服に涙の染みが広がっていく。



「私が転ばなければ…

 彼は私を庇って…」



 幸せだった。


 私より少し年上の彼は私の知らないことを


 たくさん教えてくれた。



 幼馴染の彼だけど、

 私より先にどんどん大人に近づく彼に並びたくて

 少し背伸びをしてお洒落をしてみたりした…


 彼は私の些細な変化にもすぐに気づいてくれて

 褒めてくれた。



 大好きだった。



「う…うう…」


 
 ぼやけて滲んでいく世界


 心に穴が空いたように空っぽになっていく身体




 すると目の前にハンカチが差し出された。



「助けてやれず…すまなかった。


 その人を殺めたのは鬼だ…」


 鬼…?


 確かに人間とはかけ離れた姿形をしていた。


 でも鬼って空想の中のものでしょう?

 御伽噺の中でしか出てこないのではないの…?



 男は彼の亡骸を優しく抱えた。



「もうすぐ隠が来る。

 あとはそいつらに任せる。」



「隠…」



「この方の生家をその隠に伝えてくれ。

 共に向かってくれるはずだ。」



 
「…彼がいなくなった今、

 私はどう生きていけばいいのでしょうか。」



 泣き疲れた私は


 ぼうっと空を見上げる。




「…俺も知りたいくらいだ。」



 ゆっくりと男の方を見ると


 憂いを帯びた瞳をしていた。

5.炎柱と呼ばれる男→←3.悪夢



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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - ハウンさん» ハウンさん、こちらこそお読みいただきありがとうございます!引き込まれると言ってくださり大変光栄です!続編も更新しましたので、引き継ぎお楽しみいただけるよう頑張りますね! (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、ありがとうございます!まっすぐな煉獄さんの深い愛情が表現できていれば…と思います。これからもそんな彼を言葉だけではなく、仕草や態度での表現ができるように努めたいところです! (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
ハウン(プロフ) - 素敵な作品を作っていただきありがとうございます!ものすごく感情移入してしまって胸が締め付けられるくらい引き込まれました!続編楽しみにしてます! (2022年2月28日 23時) (レス) id: 065a2165a6 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 今日も煉獄さんが素敵だ。押し付けがましいところは一切なく、ただただ彼女の幸せを願い笑顔を作れる彼は本当に素敵。 (2022年2月28日 21時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 彼はあまり内緒話など出来なさそうですよね(笑) 巧いだなんて言っていただけて…嬉しすぎて今夜は幸せな気持ちで眠れそうです〜!いつもありがとうございます。 (2022年2月26日 21時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年2月5日 21時

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