淡紅舞う【煉獄杏寿郎】

5.炎柱と呼ばれる男 ページ5

「あの…あなたは何者ですか？」



「鬼を狩る者…それだけだ。

　だが、それももう意味のないこと…

　もう…」



　先程の堂々たる剣技とは真逆なほどに

　やさぐれた表情と声色。


「炎柱様…！！」


　
　"炎柱"と呼ばれた彼の元に、

　数名の見たこともないような

　格好をした人たちがやってきた。


「炎柱と呼ぶな…俺はもう鬼殺隊をやめる。」



「ですが…」



「うるさい！もう俺に構うな…」



　男は彼を"隠"の人たちに引き渡すと


　酒瓶を持ってフラフラとした足取りで

　
　暗闇に消えていった。








「あの…その…残念です。」


　隠の方は私の手を優しく握った。


　寄り添ってくれるその心が今はただあたたかくて…


「…はい。」


「こんな時に申し訳ないですが、案内お願いできますか？」


　何度願っても、もう彼は戻ってこない。

　過去は取り戻せない。

　それなら私はどう生きる？

　どう生きれば…

　彼に胸を張って頑張って生き抜いたと言える？

　彼が救ってくれたこの命を

　無駄にしてはいけない…

　そうだよね？


　夏風が私の髪を揺らした。




　私は涙を拭って、隠の人に微笑んだ。


「はい。着いてきてください…」
　



　隠の人と歩く道中、

　私は"鬼"のことや、

　助けてくれた"炎柱"のことについて聞いた。



　鬼は人間を主食として食べるそうだ。


　身体能力が高く、傷もすぐに治り、

　再生能力もあるとのこと。


　鬼は特別な刀で頸を切り落とすか、

　陽光に当たらない限り死なない。


　その特別な刀を持って鬼を狩る剣士が

　鬼殺隊というそうだ。


　政府非公認だからあまり知られていないとのことで、

　私を助けてくれた男の人は、その鬼殺隊の中でも

　最強と言われる剣士、柱の一人だという。


　"炎の呼吸"と言われる呼吸法で鬼狩りをするため、

　炎柱と言われているようだ。

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