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#135『一番罪深い人間』 ページ49

辻村も朔の母も娘に何も言わない。

辻村は娘に自身が生きていることを言わない。

朔の母も自身の死の真相を言わない。


親と子は近いようで遠い。

いずれ朔は全てを知ることができるのだろうか。

母が囚われ続けた物に朔も捕まってしまうのだろうか。


朔は余りにも無知だった。


親が子に無償の愛を与える、これが普通の人の感覚であり、常識であるだろう。


でも、朔はそれを知らない。


知らずにここまで育ってしまった。


親と子の関係を知らずに大きくなった。




傍から見れば哀れな事だろう。


朔からすればその思いはただのありがた迷惑でしかない。


不完全で歪、これが朔の代名詞だろう。



朔はそこからの記憶が曖昧だ。珍しく心配した綾辻に別れを告げフラフラと彷徨いながら社員寮に帰って来た・・・筈だ。


その時朔の脳内を占領していたのは、母の事だ。


朔は自室に戻る布団に包まって目を瞑り、思考を進める。

異能特務課のかなりのお偉いさんである辻村とかなり親しい仲という事はやはり母もそっち系の人なのだろうか。

ロシア政府のスパイ、ありえない訳では無い。僕が産まれてすぐ死んだことにも納得はできる。

でも、僕の父親が誰か分からないには絞りようが無い。

矢張り父親も政府のスパイだったのだろうか。


でも、それなら何故僕は特務課に保護された瞬間、間諜という疑いをかけられたのだろうか。

きっと辻村は僕に母の面影を感じて、間諜だと疑ったのでは無いだろうか。

だったら、母親はきっと、だったら父親も





暗殺者だったのだろう




朔はこの解答に頷いた。別に可笑しい訳では無い。

朔の血にそういう物(・・・・・)が流れているのはむしろ自然な事だ。

親から受け付いた才能、と言うところだろう。

十歳も満たない少女が多くの人を屠った。

きっと天性の才能のお陰でもある。

精神が揺らいでいる時期に多くの人を殺し、それに罪悪感を抱かない。


ああ、きっと僕は。




この世で一番罪深い人間だ




朔は諦めのため息を吐いた。

作者から→←#134『美しく育った』



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飛沫(プロフ) - hurukawaさん» いえいえ、すみません。是非最後まで見てください。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - 見れました!ありがとうございます! (2021年1月15日 18時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - hurukawaさん» ご指摘ありがとうございます。こちらの不手際で非公開になっておりましたので、それを解除しました。見れるようになれたと思います。すみませんでした。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - #96がないです (2021年1月15日 17時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛沫 | 作成日時:2020年3月16日 15時

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