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タカラ×ノ×ヤマ ページ8

『それは奥の箱、そっちはこちらへ。』

クロロたちが去り、眠っていたAは身支度を整えるとすぐに身辺整理を始めた。

歩けぬ彼女の代わりに部屋を走り回っているのは、下働きの少女たち。

部屋の至る所にしまってあった珍しい工芸品から、秘宝までを引っ張り出し箱へ詰めていく。

「姐さん、お着物はどうしましょう。」

「姐さんのお下がり欲しい。」

「わっちも欲しい。」

『やりんせん。自分で稼いで買ったらいいでありんしょう。どうしても欲しいのなら抱えの姐さんに頼むべきでありんす。』

Aは少女たちの声に動じることなく、ひたすら手を動かした。

着物は丁寧に畳んで桐の箱の中へ。

簪や紅、白粉は化粧箱へ。

頂き物は別の箱。

自分で買ったものは手元へ。

緋の目は






次の食事の時間になる頃、漸く片付き手伝いの少女に駄賃を渡してやる。

決して少なくはないその額に年相応の笑みを浮かべ嬉しそうに去っていく。

「どうせ明日の店が終わったら死ぬんだから、もっと弾んでくれても。」

「しっ、姐さんの前よ。」

「っ、本当のことでありんす。」

たどたどしい花魁言葉を使った少女は、Aを嘲り笑うように見下ろした。

「歩くことも出来ん、道中も出来ん花魁が死体になってまで身請けだなんて随分必死でありんすなあ。」

Aは何も返さなかった。

「八文字も踏めん女郎なんぞ、畜生」
『お黙りなんし。誰に向かって口を聞いていると思っていんすか。』

Aの声に少女の顔色が失われていく。

まだ怒らせてはいけなかった。

『それを連れて行っておくんなまし。声も聞きとうありんせん。』

控えていた男たちは、Aの一言で少女をどこかほかの店へ下げ渡した。

将来がどれほど有望でも、現役花魁の気に触るのなら、たとえ花魁の命が残り僅かであろうとも将来を絶たれる。

それがここヨシワラ。

Aは小さく息をついて1人片付いた部屋に閉じこもった。

ユメ×ト×ユメ→←フタリ×ノ×ハナシ



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カナ(プロフ) - ほんとにこの作品大好きです何度も読み返してます。また更新されるのをずっと待ってます! (2020年8月28日 12時) (レス) id: 653b7cacce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆうたそ | 作成日時:2019年11月25日 20時

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