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「あ…、えっと。ありがとうございます…決して高くない金額……」
「うん?気にしないで。ああ────いや、そうだな。じゃぁ御礼に、璃月(ココ)を案内してくれないかな?実はこの土地の人間じゃなくてね、来たばかりで土地勘がないんだ」

 しどろもどろに伝えてきた彼女。このまま「それじゃ」と立ち去っても良かったのだが、折角モラを肩代わりして支払ってやったのだから利用出来(つかえ)るモノは利用し(つかわ)ないと。そう思い、この璃月を案内するように提案をしてみる。


「そ、そんな御礼で…?失礼では?お金は後でちゃんと返しますよ…」
「いいのいいの。君の時間を貰ってしまうんだからケースバイケースってことで」


 ケタケタ、と笑ってそう伝えると、彼女は未だにどこか不満気な様子であった。まぁ、彼女の気持ちも分からなくはない。見ず知らずの男が隣に現れたと思ったら急にモラを支払い、対価に璃月を案内しろ、だなんて。警戒して当然だろう。まぁ、律儀に払ってもらったモラのことを気にするあたり、良心さはあるようで何より。人によってはそのまま軽率に「あれもこれも」と強請る輩も少なからず居るので世の中困ったモノだ。


「ま、まぁ…はい。案内くらいなら一応……」


 多少間をあけて不服そうにではあるが彼女は首を縦に振った。その返答に軽く胸を撫で下ろす。別に断られたら「モラを支払ったんだからそれくらいはいいだろう?」と軽く突いてやろうと思っていたので手段はあったが、手荒な真似は来たばかり早々では流石に避けたい。千岩軍に捕まるのも御免だ。璃月には手練の法律家もいると聞いたし、地味なことをするのは好まないけれどここは大人しくしておくのが吉なのだろう。


「それじゃぁ案内頼むよ」


 ニコ、と笑って先に歩くのを促し、逃さないようにする。渋々彼女は動き始め、こうして璃月の観光ガイドは無事見つけることはできた。

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作者名:無胤 | 作成日時:2022年12月2日 0時

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