#好きだって ページ25
「さかた……」
『A……』
自転車は放り投げた。
後ろでガシャン!って音がした。
そんなのもう、どうでもいい。
手の届く距離に来て。
さかたんの瞳が潤んでるのが見えて。
殴ってやろうと思って振り上げた手は、思ったように動かなくて。
そうしている間に、私の手はさかたんに掴まれて……触れられてるトコが熱い。
「またね、が長いよ……」
『……うん』
あぁ、もう……泣きたくないのに。
「変な呪い、かかったまま!!」
『……うん』
さかたんの口元が、くるんと上がる。
「どうしてくれんの……」
『どうしよっか』
近くで聞こえる声が甘くて。
私の視界は滲んでて。
本物だって確かめたくてシャツを掴んだ私にさかたんは、くふふ……って笑う。
『A……』
泣きそうな顔したさかたんがニッコリと笑ったから。
愛おしそうに私の頬を撫でるから。
「待たせ過ぎ……」
『良かった……呪われててくれて』
そんな事、言うから。
仕返しに、唇を塞いでやった。
そしたら。
逆に噛み付かれて。
ぎゅうぎゅうに抱きしめられて。
さかたんの舌が私をぺろりと舐める。
ちゅ……って音を立てて離れると。
艶っぽくなったさかたんの唇に目が奪われて視線を外せなくなって。
くふっ……って笑ったさかたんが、私の頭に自分の顎を乗せて。
『好きなんだけど〜?』
「……誰を」
『お前に決まってんでしょ』
抱きしめたままの私を左右にユラユラと揺らしながら、さかたんはずーっと、あははって笑ってて。
「……知らなかったなぁ〜」
『ウソつけ!!』
「だって、何も言われなかったし」
『あんなに優しく抱いたのに?お前、分かんなかったの?あれ?こんなおバカちゃんだったかな?』
「抱っ……!?」
さかたんは完全に私を揶揄ってて……ずーっと、あははって笑って、ユラユラ揺らして。
そのまま私の頭から顎をどけると、ひょいっと私の顔を覗き込んで。
その瞳は、あの頃のまま。
キラキラな潤赤色。
『……解かなくて、いいよね?』
「……え?」
『このまま掛かっててくれるでしょ?』
そうして私達は、また唇を重ねた。
E.N.D
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