#なんで? ページ24
「……もしもし?聞こえてる?」
耳を澄ますと車の通過する音や誰かが歩く音が聞こえるから、故障とかでは無いみたいだけど……。
「もしもし?セン……」
『久しぶり』
スマホの向こう。
忘れもしない声。
「へ……」
『来ちゃった』
心臓が弾かれるみたいに鳴って。
「え、え、さかた……」
『うん……さかたんやよ』
「……ほん、もの?」
『多分』
相変わらず、ちょっと憎たらしくて。
久しぶりなのに、いつも通りで。
「なんでセンラさんの番号……」
『あ、まだ俺スマホ買ってなくて……連絡先も分かんなくなっちゃったからセンラにスマホ借りて電話してんの』
相変わらず、飄々としてて。
久しぶりなのに、いつも通りで。
「…………どこ」
『え?なに……』
「どこにいんの!!」
『え、あ、センラん家……』
「分かった」
『え、A?』
「今から行く」
手に持ってた缶ビールは、いつの間にかどっかに行ってた。
その代わりに私の手に握られてるのは、スマホと自転車の鍵だった。
家の鍵は掛けたか覚えてない。
階段は駆け下りた。
自転車の鍵を外すの手こずった。
慌てて乗ろうとして足を打った。
立ち漕ぎも久しぶり。
息が上がる。
運動不足かな。
違う。
私が、少しでも早く、少しでも前に進みたいって全身で思ってるからだ。
全力で漕いでる足が痛い。
あぁ、もう。
あぁ、もう。
バーカ。
バーーーーーカ。
さかたんのバーーーーーカ。
夜中なのに車多いよ。
信号も全部引っ掛かる。
酔っ払いの知らないおじさんから、全力の「頑張れ!!」って応援もらっちゃったよ。
目の前が滲むよ。
息も苦しいよ。
確かセンラさんも引っ越してなかったハズ。
逢いたい。
逢いたいよ。
あぁ、もう。
サンダル脱げそう。
橋も長いよ。
ちょっと坂になってるじゃん。
汗が滝だよ。
せっかくシャワー浴びたのに。
少し速度を緩めた時、向こうから急いでる足音が聞こえてきて。
顔を上げたら、記憶に残るシルエット。
街灯が照らすのは……私が待ってた人。
……さかたんのバーーーーーカ。
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