【d!】ストーカーな君【zm】 (ページ10)

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side-zm

駄目だ。駄目だ駄目だ駄目だ。流石にヤバイ。とまれや！とまれとまれとまれとまれ！

頭の中では、ずっと警鐘が鳴り響いている。
今この行動が、駄目な事ぐらい知っている。まさか自分が、こんな事をしだすなんて、自分でも動揺している。

物陰から前方に目線を向けると、目線の先には“彼女”の後ろ姿が。

これは所謂、“ストーカー”というものだろう。

初めて彼女とコンビニで会ってからというもの。彼女をあのコンビニでよく見るようになった。

毎回、相変わらず不健康そうな物と煙草を買って帰る彼女。

その日も、きっとそうだったのだろう。

バイトが終わり、スタッフ用の出入り口から外に出ると、客用の出入り口から、音が聞こえた。

ついその音に反応してそちらを見ると、そこには彼女の姿が。

彼女は俺に気付く事無く、そのまま歩いて行く。

「早く帰ろ。」

ポロッと、彼女が溢した独り言に、自分の動きが止まったのが分かった。

そういえば、彼女はどこに住んでいるのだろうか。よくこのコンビニに来るという事は、まぁまぁ近い筈だ。
それに、コンビニ以外の所で、彼女が何をしているのかも分からない。

名前は？歳は？勤め先は？趣味は？

俺は彼女の事を何も知らない。

それに気付いてしまうと、何故かとても嫌な気持ちになった。

頭に濃い靄がかかって、上手く思考出来ない。胸の奥が、ギュッと締め付けられるような感じがした。

いつのまにか、少し離れたところにあった彼女の背中を、思わず俺は追いかけた。

ー
ーー
ーーー

「A…さんって、いうねんな…」

頭の靄はまだ晴れない。
その代わり、胸の痛みは消えた。いや、消えたというより、心地良いものに変わったのだ。

表札から彼女の家に目を向ける。1人で住むには大きい、一軒家。

ここまで。Aさんの家まで後をつけてしまった。
家を突き止めてしまった。苗字を知ってしまった。

もしこれをAさんに知られたら、どう思われるだろうか。

気持ち悪い？迷惑？それとも…

結局俺は、この日から、Aさんのストーカーを続けた。

彼女の事を知る度に、彼女に惹きつけられる。

下の名前はAというらしい。歳は俺より少し上で、趣味は読書と喫煙。免許を持っていて、たまに車で出勤する。しかし仕事先はブラック。

Aの家の合鍵を作った。これでいつでも、彼女を近くに感じられる。

最初の頃の罪悪感は薄くなってきた。相変わらず、頭の靄は晴れない。