五百話 ページ31
たま「銀…時…様」
詩織「ん…」
金色になんか負けない銀の輝きを取り戻したようで喜びから目を見開かせる。
旦那となら不思議になんとかなると思えてしまう。
もう何度目かもわからない希望に顔を上げた。
…いや、これは希望というより旦那への信頼かな。
気が緩んだことで袖を掴む力が自然と弱まり手を離した。
たま「わかりましたァじゃあ今日はこのへんで解散という事で」
銀時「お前は置いていくんかいィィ！」
詩織「ふふ」
心に余裕ができたのかたまさんと旦那のやり取りに思わず笑みが溢れる。
目尻を拭いつつもスタスタとスナックへ帰ろうとするたまさんへ視線を向けた。
スナックお登勢のまくらでしか充電できないとかはあるんだろうけど、旦那の決意からの流れとしてはあっさり過ぎるかな。
銀時「オイ、てめーは俺派だって金時に割れてんだ！気をつけ…」
たま「銀時様は何があっても銀時様なのですね。
ここから逃げ出すと言ったら…私が怒ると思いましたか？」
坂田金時の存在を懸念して引き留めようと口を開くとたまさんが足を止める。
口角を上げたまま若干振り返り、どこぞの映画シーンのように告げた。
たま「怒りませんよ、私も一緒に連れていってくれるなら」
銀時「どこで覚えたんだよ、そんな口説き文句」
旦那がリラックスした表情でたまさんを見送る。
万事屋が坂田金時に乗っ取られたのを知ってからてんやわんやだったが、ようやく一段落つけられたような感じだ。
軽いため息を吐いてから旦那は途中笑い声しか発さなかった私を気に掛けてか顔を覗き込んだ。
銀時「…しっかりしてようと、まだガキだもんな」
詩織「んっ、子供じゃありませんし」
涙でぐちゃぐちゃであろう私の顔を見るも深くは言及せず頭をポンとだけ叩いた。
詩織「Aさんと…同じこと言うんですね」
涙と共にその言葉が地面に落ちていく。
言い方はマイルドだったが二十七歳から子供認定されるのはこれで二回目。
もう大人だから、なんて思春期じみ発言だが旦那もAさんも色々背負いすぎだと思う。
深呼吸をして泣き姿を見られたことを少し恥ずかしく思いながらも旦那に向き合った。
詩織「とにかく私も旦那についていきますよ。
私はAさんと神楽ちゃんと新八君と、みんなと笑ってる旦那が好きなので」
人差し指で目尻を拭って旦那へ微笑み掛ける。
たまさんと定春君と一緒に、ハッピーエンドを目指すために。
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作者名：たこわさび | 作成日時：2023年10月9日 22時
