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四百九十七話 ページ28

「そうだ兄ちゃん話してみろよ」


「元気出せよ‼」


「負けんなァ‼」



飛び降りを図っていた女性から地上の野次馬まで元気づけるような声が続々と上がる。



銀時「うるせェェェ優しくすんじゃねェ!泣きそーになんだろーが‼
…でも、最後にてめーらみてーに…俺なんか知らなくても優しくしてくれる奴等に会えて良かったよ」



しかし旦那は励ましの言葉を浴びているとは思えない面倒臭い台詞を吐き捨てた。

そして後ろ向きな言葉を呟きビルの縁に足をかける。
今にも飛び降りてしまいそうな不安定な心に観衆からどよめきがが起こった。



「待てェェェェ兄ちゃん‼」



私もそれに引っ張られ不安を覚えるが違う、そうじゃない。


見投げを考えるような人は自分のことで手一杯になり他の事が考えられなくなっている場合が多い。

けれどそこに自分より不幸な人間がいたらどうだ。
己より余裕がない人間を見てその心に他人を思いやる余裕を生んだ。


あれは彼女を止めるためのフェイク。


機械にはない人間の機微を読む力で金より銀が勝ったということ!


空に足をのばすと見せかけて角度をつけ、真っ直ぐに女性の方へ駆けていく。

これでようやく万事屋銀ちゃんの復活だ!と一人意気込んでいると旦那は女性ではなく坂田金時に向かいこう言い放った。



銀時「あああゴメン‼自分の心が重くて身体がすべった‼」



………三つ子の魂百までということらしい。

ここまでなら今まで通りただ坂田金時が被害にあうだけ。
しかし、ここでイレギュラーが発生した。



猿飛「やめてェェェ‼金さんに何をするのォォ‼」



この世界は万事屋しかりAさんしかり立ち位置が全て坂田金時にすげ替えられている。
ならば旦那をストーカーしていたさっちゃんだってそうだろう。

愛する人を守るために飛び出したさっちゃん。
既に旦那は飛び出しているので急に攻撃を断ち切ることはできない。


あのままじゃ旦那の手によって彼女はビルの屋上から落下する。


脳がその結論に至った瞬間、私は彼女の元へと走り出していた。
これによって旦那の印象がどうのこうのとか関係ない、さっちゃんが!



猿飛「キャアァァァァ!
ちょっと金さんにかまってほしかっただけなのにィィィィ‼」


金時「フン…銀時、これでお前さんはシメー………」



一歩たりとも動かない坂田金時を余所に、旦那と私は彼女を追うように屋上から飛び降りた。

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作者名:たこわさび | 作成日時:2023年10月9日 22時

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