四百九十六話 ページ27
「やめなさーい落ちつきなさーい!」
「来ないでェ‼飛び降りるわよ‼」
吉原のある建物の屋上。
興奮気味の女性が地上から投げ掛けられる制止の声を振り払う。
これが次の万事屋金ちゃんの依頼、入れ込んでいた客を別の遊女にとられたとかで飛び降りを図っている彼女をとめること。
近づいて説得したいが近づいたのが原因で飛び降りられたら…と考えるとヘタに動けない。
屋上の隅で燻っていると女性が立っていた屋上の縁に、旦那がカップ酒を置いた。
銀時「ブルー入ってんだけど…ちょっと一人になりたいからあっちいっててくんない」
見投げを試みている女性より数倍も青い顔をして一人になろうとする旦那。
一人になりたいというか女性一人きりだった屋上に無理やり割り入ったのが旦那なのでは。
というか何気になぜ機械達の昼休みの一時と台詞が同じなのだろうか。
アレか?人生絶望系成人達のブルーな一時なのか?
女性本人よりメンタルカウンセラーが必要にも見え彼女を止められそうにない旦那だが、対抗心からなのか負けじと坂田金時も縁に緑茶を置いて進み出た。
金時「落ち着けよ、死ぬ前に茶でもつき合ってくれねーか」
なるほど、直接対決ということか。
「それ以上近づかないで‼ほっといてよ‼」
金時「ほっといてほしい奴はこんな派手な死に方選ばねーさ」
銀時「最後に真っ青な空が見たかったのさ、俺の心を映した空を」
詩織「旦那?間違って飛び降りないでくださいよ?」
一人勝手にそう解釈したが雲行きは怪しい。
見投げをしようとしている女性よりも旦那の方が今にも飛び降りそうなオーラを放っている。
違う視点で見たら相談に乗るというか逆に相談に坂田金時に乗られているまである。
どちらかというと旦那のメンタルの方に気が行き心配になるも坂田金時は構わず励ましの言葉を投げ掛けた。
金時「話してみろよ、しらねェ奴だからこそ話せる事もあんだろ」
銀時「お前に話しても…」
詩織「違う旦那!その声の主知ってる奴だから‼」
なぜか坂田金時が旦那の相談にのり始めそうな雰囲気に思わず声を張り上げる。
依頼を上手く解決できるのかどうか不安に思っていると、坂田金時のみならず女性が口を開いた。
「あの、私が言うのもなんだけど冥土の土産にするからさ…話してみなさいよ」
おずおずとそう告げる女性はさっきまで取り乱していたのが嘘みたいだ。
平常心を取り戻せたのはいいけど…当初の目的なんだっけ。
360人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たこわさび | 作成日時:2023年10月9日 22時