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四百八十二話 ページ13

これはどう考えても完全に私の過失なので嫌な汗が頬を伝う。
早速それを拾おうと屈む源外さん。



源外「ん?なんだこれ」


詩織「まっ…!」



急いで手を伸ばすが私の焦りなんて露知らず源外さんは資料を拾い上げた。
1ページ目が目に入ったのか眉を寄せて資料をめくっていく。


源外さんからすればこの町のヒーローの坂田金時がプラモデルだった、なんて信じられない事実を突きつけられている状態。

読み進める手は早く物の数分で読み終わったようだ。



源外「嬢ちゃん、こりゃどういうことだ?」


詩織「そ、れは…」



問いに分が悪くて視線を逸らす。

正直に伝えて即納得、即握手と協力する未来はそうそう見えてこない。
資料だって作者名も書いていないんだから信用度は地の底。

迷いが出て口を開きまた閉じてを繰り返す。


頭のおかしい奴と思われるかもしれない、冷たくあしらわれるだけかもしれない。
心臓を押し潰されるような感覚が自分の心の弱さを表しているみたいだった。



詩織「にわかには信じられない事だとはわかっています。…けど」



語尾を濁す言い方に何か察したのか源外さんは再び手元の資料に目線を移す。

不安が九割、という受験の結果発表を上回るくらいの憂鬱。
そんな中源外さんの声が私に降り注がれた。



源外「信じる訳じゃねェが、金の字のこのスクープ笑い飛ばしゃあしねェよ」


詩織「!…いいんですか?」



想像していたより幾分かは前向きな返事にバッと顔を上げる。
源外さんの表情にからかいの気持ちやいたずら心なんて物はなかった。

しかし簡単に信じる情報ではないことを私も重々承知している。
裏があるんじゃないかと疑惑を払えずにいると源外さんが口を開いた。



源外「近頃たまがスナックにもココにも顔を出さねェんだ。
黙って仕事を放り出すような奴じゃないのはわかってるから、何かあったんじゃねェかと思ってな。

俺は自分のからくりを本当の子供みてェに大切に思ってる。
もしこのスクープとたまの失踪が関係あんなら無下には扱えねえよ」



源外さんが手元の資料に目線を落とす。
やっぱり江戸一のからくり技師は心構えから違う。



源外「持ってけ、これ…いるんだろ?」


詩織「あ、ありがとうございます!」



差し出された資料をありがたく受け取とった。
今だからこそ人の善意が染み渡る。



源外「……たまを、よろしくな」



ボソリと呟かれたその一言に私は勢いよく頷いた。



詩織「はい!」

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作者名:たこわさび | 作成日時:2023年10月9日 22時

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