四百八十一話 ページ12
源外「嬢ちゃん初めて見る顔だな。
もしかして俺のからくりを見るためにわざわざ外から来たのか?」
詩織「え…あっ、そうですそうです!
この飾ってあるからくりが素敵でつい立ち止まっちゃって‼」
源外「だろだろ!」
俺も有名になったもんだな、と笑いを溢す源外さんに呆気にとられながらも取り繕うために首を縦に振る。
思いっきり口からでまかせで申し訳ないけど本心なのでなんとか…。
楽しそうに嬉々として目を輝かせてくる分だけ罪悪感がすごい。
源外「コイツは三郎っつーんだけどな。
ホラ、最近はからくりも萌え系に力を入れ始めた奴が多いだろ?
だからこういうマ●ンガーZ!とか言うガッツリした良さをわかってくれる若者がなかなかいねーんだよ。まさか嬢ちゃんみたいな層にウケるとはな」
詩織「あの、パイルダーオン!みたいなのは最近見かけませんからね」
自分の記憶の彼方に眠っている真選組での隊士さんとの会話、Aさんの鼻歌等を引っ張り出して失礼にならないようになんとか相づちを入れた。
なんとか源外さんが語りに夢中になっている間にお暇しなければ。
…待て、この資料を源外さんに見せて信じてもらえればひょっとして戦力増加に繋がるのでは。
源外さんの工房にあった坂田金時の説明書、あんな精巧なからくり並大抵の職人には作れない。
そうなると坂田金時の制作者は江戸一番のからくり技師の源外さんの可能性が浮き上がってくる。
いつ、何のために、どういう目的でかは置いておいて源外さん程の人なら自分の物作り時の癖も知っているはずだ。もちろん、資料のまとめ方だって。
詩織「…………」
源外「それでここを押すと醤油が出て……。
どうした、便所にでも行きたくなったか?」
詩織「あ…いえ!お構い無く‼」
チラリと無言で背後に回した資料の方に視線を動かした。
どうせ頭のおかしい奴と思われるのがオチなんだろう。
源外さんに敵対視される未来を考えてしまいつい臆病になる。
それよりも旦那に伝えることが先決だと思い少しずつ横に動いていたときだった。
源外「うおっ!」
詩織「きゃっ!」
なんの運命のいたずらか突如強い風が吹いて私の髪がなびく。
それと同時にスカートも舞い上がり慌てて押さえようと手を前に出した。
そう、資料を持っていた手をスカートを押さえるために移動させたのだ。
掴む力が緩んで風によりバサバサっと派手な音を立てる資料。
それは丁度私と源外さんの合間に落ちた。
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作者名:たこわさび | 作成日時:2023年10月9日 22時