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「凛は、もう俺のこと信じられない?」
迅が少し微笑みながら聞いてきた。その微笑みは私を試しているようにも見えるし、泣きそうな子供が我慢して笑っているようにも見える。
私はゆっくり目をつぶった。そうすると食堂の喧騒が遠のいていって、代わりにあの日の雨の音がしてくる。救急車のサイレンの音。吐き気がするほどの嫌な予感。血の匂い______
「…あれから、2年か」
私はゆっくりと目を開く。すると、雨の音が消えて食堂の喧騒が戻ってくる。
「迅は、私にお前のこと信じてるっていってほしいんか?」
私がそう聞くと迅はくすっと笑って「そうかもしれない」と呟いた。
「あんたの予知は信じてるし、友達ともおもっとる ただ、あんたとおると、あの事が頭によぎる それだけや」
「…凛はやっぱり優しいな」
迅は破顔して笑った。
「それで、あんたは私に何お願いしたいん?」
さっきから迅が私に何か頼みたい事があるような気がしていた。
「凛は話が早くていいね、実は今度の侵攻で俺の後輩が最悪死ぬ可能性があるんだ」
「後輩って言うたら…遊真のことか? いや、ちゃうな あのメガネのことか」
私は遊真と始めて会ったときのことを思い出していた。遊真とはあれから、よく会っていたがメガネとはあの一回きりだ。
「そうなんだ 戦いに参加してほしい訳ではないんだ 戦いが終わった後、修が怪我をしている予感がするようなら、助けに行ってやってほしい 凛ならできるだろ?」
「わかった 取り敢えず向かえばええねんな」
「頼んだ」
そう言って、また迅は微笑んだ。その微笑みはさっきの試そうとしているような感じは微塵もなく、ただただ痛々しく、なんだかやりきれなかった。
私はそんなことを頭の中で考えながら、メガネもとい修のことを見下ろしていた。
戦いはアフトクラトルが引き下がり、終わった。私は新型の相手はしなかったものの、市民が襲われないように戦っていた。
「っあ、はよ、運ばな」
修はお腹や足を突き刺されたようで血がどくどくと流れていた。
心臓がいつもより早く動いていた。彼に伸ばした手が震えていて、中々自分の思う通りに動かない。
「情けない…! しっかしろ!」
私は震える手を必死に抑え、彼に触り担いだ。血がついたがそんなの気にしていなかった。
「あ! 凛さん!!」
「その人メガネ先輩ですか!!?」
米屋とC級の女の子も駆けつけてくれて、急いで医務室に運んだ。その後、私は医務室で意識を離した。
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つちのこ(プロフ) - ありがとうございます!忘れてしまってました… (2020年5月23日 23時) (レス) id: 2241c11c95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つちのこ | 作成日時:2020年5月23日 22時