第一話 ページ3
「とぉさん♪ あそぼぉ!!」
栗色のくせ毛の少女が、千年伯爵に抱きつく
猫のように軽い身のこなしで飛び跳ねたため、伯爵の首元に腕が回っている
「無理ですネ♥ 今カラAKUMAを作りに行くのデス♥」
少女の提案に却下を返すも、伯爵は少女を退けようとはしない
ぶぅ、と頬を膨らませて不満を目一杯押し出すが、伯爵は何食わぬ顔だ
どうにもならないと思ったのか、つまんなぁい、とぼやいて少女は伯爵から飛び降りる
「ルルねぇと一緒に遊びに行こうかなぁ」
「だめデス♥ ルル=ベルは他のお仕事がアルのですカラ♥」
伯爵が駄目なら、と少女は己の家族を思い浮かべる
とある美女の元へ行こうかと口にするも、それすら却下された
「どーして、父さんはボクの遊び相手をとっちゃうの〜」
再び頬を膨らませて、少女は伯爵を睨む
本気の睨みではなく、ただ本当に不満なのだろう
気分屋の猫が機嫌を損ねたときに似ていると、笑顔の下で伯爵は思う
少女の頭の上に手を置き、「暇ですカ♥?」と尋ねる
「暇だよぉ。ロードもティッキーもいないもん」
よく行動を共にする、姉妹同然の少女が居らず
揶揄い甲斐のある青年は居らず
暇なときに遊びに付き合ってくれる2人がいないため、少女は暇を持て余している状況だった
伯爵の元へ来る前に、一応暇そうな人の元へは当たってみたのだが、不運にも暇な人はいなかったようで
かと言って、少女を最優先に、と面倒を見て相手をしてくれる彼らを呼び戻すことはしたくない
少女の部下という名目である彼らは、現在仕事中なのだから
幼い容姿を持った少女だが、その辺の分別はきちんとある
「デハ、お仕事、行ってくれますカ♥」
不貞腐れる少女を見かねたのか、どこからかカードを一枚取り出した
「お仕事?」
きょとん、と首を傾げる
「AKUMA達とココに行って来て下さイ♥」
手渡されたカードに書かれた情報を素早く読み込み―――
―――少女は、顔を輝かせた
「スイラがいる!!」
「ハイ♥ スイラから報告が来ましたので、仕上げ、お願いしマス♥」
仕上げ、と聞いて、少女は悪戯っ子の笑みを浮かべる
「頼みますヨ♥」
「うんっ」
少女はひらひらとスカートをなびかせて、楽しそうにくるりと回った
「遊ぼうね」
カードを見つめて、少女はクスクスと笑う
「イノセンス♥」
少女の姿は、闇に消えていった
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作者名:涼野 優 | 作成日時:2011年7月1日 20時