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そこからはもう言葉が溢れ出した。
私の選択が何人を殺したのか。
どこかで誤魔化していたことが一気に押し寄せてきて、罪悪感で息ができない。
逸見さんは、私が話すのを黙って聞いた後、そっと私の折れた指を撫でた。
「ならば、君に出来る償いは一つだ」
彼の、心臓の在処を。
「君が迷えば迷うだけ、奴は命を奪っていく」
「今も、一般市民を無差別に殺している」
「ハンター達が捕らえようとはしているが、手に負えない」
彼の、命を。私が?
「……できない」
私にとっては、彼の命はその他全員より重いのか?
答えはわからないが、やはり涼星は殺せないと逸見さんからの問で確信した。
迷いは嘘のように解けていた。
私は涼星を殺さない。
私は神父を見つめる。
暗い目が細められ、私を見下ろしていた。
「……そうか。ならば多少手荒な手段に出よう」
右手首を強く掴まれる。
神父は太めの針のようなものを取り出し、私に見せた。
「何に使うか分かるか?」
首を振る。
「これを、爪の間に差し込んで、持ち上げていく。……つまり爪はぎに使うものだ」
恐怖が私の顔に浮かんだのを見て、彼は笑う。
「しっかりとくっついている爪と肉を、時間をかけて剥がしていく。指先は神経が多いからな、痛むぞ」
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