【銀魂】ボールパークの恋愛算術

44 アカツキ ページ44

沖田に背を向け歩いた後、私は建物の物陰に隠れて胸に手を充てた。
少しだけ煩い心臓を鎮めるためにそこに留まる。
「ふぅ...」と浅い深呼吸をして思い出す沖田の顔。




彼が背中を押してくれたんだ。
それを無駄にしちゃいけない。





暫くそこに立ち止まって居たが、また前を向いて歩き出した。
向かう先は"あの教室"。







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電気も付いてないその教室は窓から陽の光が溢れていて十分に明るい。
窓が開いているのか、カーテンがゆらゆら揺れていて、心地の良い風を感じた。





その窓の方へと足を動かせば強い風に吹いて髪が乱れる。
思わず下を向いたが乱れた髪を耳に掛け再度前を向く。






『よォ、』






カーテンの裏側、そこに彼は居た。
隠れてたのか、もしくは外を眺めてたのか。







『何してるんですか』

『お前こそ何してんだ』

『思い出に浸りに』








カーテンを退けて先生の隣で外を見る。
そこから見えるのは校庭と数人の生徒。




泣いてる人に、記念写真を撮る人。








『お前は行かなくて良いのか』








先生の言う其処は多分「皆のところへ」と言うことだろう。
相変わらず足りない言葉。
私は首を振って「行かない」と意思表示する。




先生は何も言わずに窓から離れて黒板の方へとゆっくり歩き出した。
私はその姿を目で追ってちょうど近くにあった席に座る。








『懐かしいな』
『ここで先生と補習してた』








綺麗とは言い難い木で出来た机の上を指でなぞってはあの日々を思い出す。








『たくさん馬鹿にされた』

『お前が馬鹿過ぎて驚いた』







そんなことを言う先生を睨みつけたが、そのやりとりすらも懐かしくて吹き出して笑う。
先生もクツクツと喉に掛かった笑いを零す。




一頻り笑って席を立つ。




黒板前にいる先生の正面へ行き、まっすぐに彼の顔を見た。
深緑の切れ長の瞳。








『高杉先生』








その瞳は私を捉えて離さない。
だから、私も逸らしたりはしなかった。

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