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∬007 ページ8

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――歴史の授業。


「――プラトンの洞窟の比喩から、古代ギリシア人が『理想』という考えを持った目的について考察しなさい……この問題、君に解いてもらおう」


「えっ、ぼくですか?」


教師に指名されたのは、Aの隣に座っている男子だった。

男子は猫背のまま立ち上がる。


「えっと…えーっと…」



困惑する彼の横で、Aはすっくと立ち上がった。



「古代ギリシア人が『理想と現実』という発想をとり始めたのは、『現実否定』のためです」


生徒は一斉に彼女のほうを見た。


Aは「ちなみに――」と続けた。


「現実を肯定していたそれ以前の人間や、現実への絶望さえできない最底辺の身分には、『理想』という発想がありませんでした」


教室がざわめく。


「君、この難しい問題がわかるのかね?」


「はい先生。哲学は好きですわ」


「ほう……女の子なのに珍しいな。しかも答えよりパーフェクトな回答だ」


「ありがとうございます、先生」


Aは当たり前のようにお辞儀した。


「だが! 何か発言をするときは手を挙げるのが『マナー』ですッ」


「…………!」


Aは持っていた本で顔を半分隠し、上目遣いをした。


「はい……先生……」


『ワッハッハッハ!!』――緊張の糸を切らすように、どっと教室が沸いた。



しかし!――Aのことをよく思わない連中が笑い声の隅にいた。


「あいつ、女のくせに知識なんかひけらかして偉ぶってるよなァ」


「ああ……兄貴たちに言って『洗礼』を受けさせてやろうぜ」


「おいおい、仮にも『お嬢様』なんだからよォ、お手柔らかにな?」











『キーン コーン カーン コーン』


空には厚い雲がゆっくりと流れ、のどかな風が校庭の木々を揺らす。


下校する生徒たちの流れの中にジョナサンがいた。


「ジョジョ〜ッ!」


Aの声に振り向くと、彼女の隣にはディオがいた。





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推しの命は私の命 - ジョナサン空気( ゚இωஇ゚) (10月15日 15時) (レス) @page43 id: 0046fb2d1c (このIDを非表示/違反報告)
油電(プロフ) - 黒猫歳花さん» コメありがとうございます…!そう言っていただけて嬉しいです(*´ω`)これからも、胸に刺さるキュンキュンを目指しながらお送りしますッ (2018年5月4日 23時) (レス) id: 95fd139937 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫歳花(プロフ) - はじめまして、この作品を読んでいるとディオにキュンとしっぱなしで楽しいです!これからも頑張ってください(*^▽^*) (2018年5月4日 20時) (レス) id: ae43b29bb1 (このIDを非表示/違反報告)
油電(プロフ) - おバカな傀夢さん» ありがとうございます笑 ディオのキャラが崩壊していないか不安でもあります(汗)お話も中盤にさしかかって参りました…! 引き続きよろしくお願いします(*^-^*) (2018年5月4日 12時) (レス) id: 95fd139937 (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - おおっ!?やっと…やっと気が付いたかッ!ディオ〜!!大好きだ〜!!油電様も大好きです笑 (2018年5月3日 22時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:油電 | 作成日時:2018年4月1日 21時

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