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∬031 ページ33

雨上がりの静けさが残るわたり廊下。


「やあ、A!」


同じクラスの男子、ミルトンに呼び止められる。


彼はポケットから四角い紙を出した。


「この手紙、君が書いたんだろう? 『――星を見つめてあなたのことを想います。たかみより』って」




(ああ、忘れてた。魔が差したときに書いた、偽のラブレターだわ)




「まさか、君からこんなに情熱的な手紙をもらうなんて……あの子とはもう別れたし、そろそろ僕たち――」


ミルトンの言葉を遮るように、Aは手紙を取り上げる。


「A……??」


ビリッ、ビリィッ


無慈悲な音が廊下に響きわたった。


白いやわらかな破片を、彼のポケットの中にねじ込む。




「私のまえで、二度と『僕たち』なんて言わないで」


「そんな! なぜ!?」


ミルトンは反射的にAの手首を掴んだ。


「ちょっとッ! 離してッ」


「ねえ、僕のどこが悪いんだい!?」




コツン、コツン、と後ろから靴音が近づいてくる。




「A」


大好きな声がして振り向くと、そこにはディオがいた。


「君は――」


ディオは値踏みするかのように、彼のつま先から顔までをじっとりと見た。


「ッッ!」


ミルトンは急に自分を格下に感じ、自然と手を離す。


「A、彼と何かあったのか?」


「いいえ、べつに何でもないわ」


「え〜、気になるなあ」


ディオはAの肩をグイッと抱き寄せた。


「ヒミツ。それより教室に戻りましょう」


「ああ――」


ディオは彼女に見えない角度で(しかしミルトンには見えるように)、魔性の笑みを浮かべた。


風をうけて、金色の髪がススキのようになびく。


あまりにも美しい――ディオに奪われたAの背中が、いつまでも少年の目に焼き付いていた。




.

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推しの命は私の命 - ジョナサン空気( ゚இωஇ゚) (10月15日 15時) (レス) @page43 id: 0046fb2d1c (このIDを非表示/違反報告)
油電(プロフ) - 黒猫歳花さん» コメありがとうございます…!そう言っていただけて嬉しいです(*´ω`)これからも、胸に刺さるキュンキュンを目指しながらお送りしますッ (2018年5月4日 23時) (レス) id: 95fd139937 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫歳花(プロフ) - はじめまして、この作品を読んでいるとディオにキュンとしっぱなしで楽しいです!これからも頑張ってください(*^▽^*) (2018年5月4日 20時) (レス) id: ae43b29bb1 (このIDを非表示/違反報告)
油電(プロフ) - おバカな傀夢さん» ありがとうございます笑 ディオのキャラが崩壊していないか不安でもあります(汗)お話も中盤にさしかかって参りました…! 引き続きよろしくお願いします(*^-^*) (2018年5月4日 12時) (レス) id: 95fd139937 (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - おおっ!?やっと…やっと気が付いたかッ!ディオ〜!!大好きだ〜!!油電様も大好きです笑 (2018年5月3日 22時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:油電 | 作成日時:2018年4月1日 21時

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