7.高鳴る胸 ページ7
「これ、君の?」
「え?は、はい。そうです」
私が頷くと彼はそれを拾って、それから私の目の前にしゃがむと次の瞬間、私を横抱きで抱え上げて立ち上がった。
「ひゃっ!?」と変な声が出る。
そのまま何処かへ駆けていく。
「あのっ!お、降ろしてください!!」
「じっとしてて。喋ってると舌を噛むよ」
「っ、……何処に向かってるんですか?」
尋ねても答えてくれない。
観念して黙って、彼に抱き抱えられながら夜の道を進む。
彼は少し大きめの服を着ているから、いつも食堂で顔を会わせている時は気付かなかったけれど、こうして私を抱き抱えている腕は意外とガッシリしていて、小柄な彼の体は筋肉質だった。
どうしてか、頬が熱くなる。
彼の顔立ちが整っているから?
それとも助けられたから?
分からない。
分からないけれど………
ドキドキと音を立てる胸の鼓動に気のせいだと言い聞かせて、私は彼に身を任せた。
それから暫く走っていたけれど、急に彼が道から外れて何処かの御屋敷の門を潜った。
母屋までかなり距離がある。
お、お金持ちの家……??
と言うかここ何処!?
そんな私の心境を知らない彼はずんずん進んで、「ごめんください」と屋敷の中に声をかける。
けれどその声量が小さいせいか誰も出てこない。
「………。」
尋ねるなら目的地に着いたと思われる今だ、と私は思った。
「あの、……ここ何処ですか?」
「蝶屋敷」
「蝶屋敷……とは、一体……?」
「ちょっと黙ってて」
「え、えぇ………」
どうして私は怒られてるんだろ…と思っていると、彼が「銀子」と誰かの名前を呼ぶ。
「ハァイ!」と声がして振り返った彼。
でもそこには誰もいない。
「誰かいないか見てきて」
「いや、誰と話してるんですか?」
独り言が過ぎると思った私。
けれど、次の瞬間、「煩イワネ!!無一郎ガ話シテルデショウ!!」と、確かにまた声が聞こえた。
視線をあちこちに動かして声の主を探す。
と、地面に一羽のからすがプンプンと怒って羽をバタつかせているのが見えて目を丸くする。
「無一郎ニココマデ連レテキテ貰ッタコト感謝シナサイヨ!!」
「かっ、かかかかか、からすがっ!………喋ってる………!?」
驚きでバクバクと胸が脈打つ。
「急患だから早く……」
彼が急かすと「仕方ナイワネェ!!」とプンスカしながら屋敷の中を進むからす。
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月見(プロフ) - 香恋さん» いつも読んでくださり、ありがとうございます!褒めて頂いてとても嬉しいです(*^^*)ゆっくりになりますが、更新頑張ります!! (6月26日 7時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - 月見さんの久しぶりの鬼滅作品…!!!しかも無一郎くん( ; ; )嬉しいです!!刀鍛冶の里編ロスを埋めて下さいます泣 相変わらずキャラが喋ってる様に台詞が聞こえてきます。続きとても楽しみにしています☺️ (6月25日 23時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2023年6月8日 22時